モーツァルト Mozart ■歌劇「コシ・ファン・トゥッテ(女はみんなこうしたもの)」K.588 モーツァルトの3大オペラといえば,「フィガロ」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」ですが,それに勝るとも劣らないのがこのオペラです。それでは,なぜ4大にならないのか?やはり,自分の恋人が不倫をするかどうかについて賭けをする,というストーリーは,道徳的に見て問題があると伝統的に考えられていたためかもしれません。 「コシ・ファン・トゥッテ」は音楽的に見ても,3大オペラとは少々性格が違います。主役がアリアを朗々と聞かせるといった部分は少なく,6人の主要登場人物がいろいろな組み合せで繰り広げるアンサンブルが中心となっています。2組の恋人たちと哲学者と侍女という配役はシンメトリカルで古典的なバランスの美しさがあります。同じ場での24時間内の出来事を描くというのも古典的な物語に多い設定です。 この作品は,オペラのタイプとしては,世話物的な内容を取り扱った喜劇である「オペラ・ブッファ」に属します。これは,18世紀後半に流行していたもので,アリアや重唱の間をレチタティーヴォ・セッコと呼ばれる早口の「話し歌い」で繋ぎながら,物語が進んでいきます。 この曲のタイトルは,「フィガロの結婚」の中に出てくるドン・バジーリオの「コシ・ファン・トゥッテ」というセリフがもとになっています。このオペラ内では,第2幕の後半のドン・アルフォンソの歌の中に出てきます。別名,「恋人たちの学校」とも呼ばれますが,内容的には「悪い冗談」「セクハラ・オペラ」になりかねないものです。「変装して入れ代わった恋人たちに気付かない」という設定は,あまりにもナンセンスですから,深刻に考え過ぎない方が「いき」な見方でしょう。ただし,「苦いユーモア」に満ちた設定は現代的な解釈も可能です。そういう,「深さ」をさらりと感じさせながらも,全体として「いき」に見せてくれるような演奏・演出が理想でしょう。 ●台本(言語) ロレンツォ・ダ・ポンテ(イタリア語) ●舞台 18世紀中頃。ナポリ。朝から夜までの1日の出来事。 ●主な登場人物とそのキャラクター 以下の説明では,この略称を使います。
*はレチタティーヴォ・セッコ(チェンバロを伴奏とした「話し歌い」の部分) ★はハイライト盤CDなどに収録されることの多い,単独で演奏されることの多い曲。
●第1幕 第1場 カフェにて
第2場 海辺の庭園
第3場 フィオルディリージとドラベッラの家の居間
第4場 芝生のある庭園
●第2幕 第1場 フィオルディリージとドラベッラの家の居間
第2場 海辺の庭園 花に飾られた船が岸辺にあり,FeとGeが楽師たちと乗っている。Deも庭に居る。そこに,Aに連れられてDo,Fiが登場。この辺りから夕暮っぽくなって来る(演出にもよるが)。
第3場 フィオルディリージとドラベッラの家のある部屋
第4場 うしろに楽団がひかえている大広間
●参考文献 作曲家別名曲解説ライブラリー14 モーツァルトII.音楽之友社,1994 井上太郎「モーツァルトのいる部屋」(ちくま学芸文庫)筑摩書房,1995 |