モーツァルト Mozart

■ディヴェルティメントK.136〜138
K.136〜138までの3つのディヴェルティメントは,モーツァルト16歳の年にザルツブルクで書かれています。いずれも弦楽合奏または弦楽四・五重奏のための曲です。通常ディヴェルティメントといえば,もっと楽章数が多いのですが,この3曲は,いずれもメヌエットなしの3つの楽章から成っています。このことから,後で交響曲にする予定だったのではないか,と言われています。そのため,ザルツブルク・シンフォニーと呼ばれることもあります。いずれも,イタリア風の瑞々しい感性に満ちた親しみやすい曲です。ロッシーニの弦楽のためのソナタなどとも似た雰囲気のある愛すべき作品群です。

●ニ長調K.136
第1楽章
 いきなり第1ヴァイオリンが滑らかなメロディを弾き始めます。このメロディは,モーツァルトの数ある名旋律の中でも特に爽やかなものです。3曲の中では,この曲が単独で演奏される機会が多いようですが,このメロディの魅力によるものでしょう。展開部では短調の部分も出てきて,何ともいえない陰影を作っています。

第2楽章 スピードの速い,1・3楽章の間にあってホッと一息つくような楽章です。シンプルな美しさのある楽章です。この楽章は,サイトウ・キネン・オーケストラのアンコールで取り上げられることがよくあります。斎藤秀雄さんはこの曲で厳しいレッスンをよくしていたようです。

第3楽章 ロンド風ソナタ形式の楽章です。はねるような序奏に続いて,第1楽章の主題に似たメロディが出てきます。第2主題は小刻みな感じで,展開部では,この2つが絡み合います。一気に吹き抜けていく爽やかな風のような楽章です。

●変ロ長調K.137
第1楽章 K.136〜138の3曲セットの真中のK.137は,ゆっくりとした楽章から始まるところから,曲全体としても,しっとりとした憂いのある印象を持ってしまいます。短調か長調かはっきりしないような雰囲気が魅力的です。

第2楽章 一転して急速な楽章になります。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの対話が楽しめます。

第3楽章 3/8拍子の快活でスケールの大きな舞曲です。

●ヘ長調K.138
第1楽章 K.136と同様の急・緩・急の構成を持っていますが,技法的には,この曲の方がより高度な技法を使っているようです。ヘ長調の主和音を分散したようなフォルテの音型に続いて,ピアノの音型がそれに答えるように出てきます。続いて,イタリア風の優雅なメロディが出てきます。

第2楽章 メロディはヴァイオリンが一貫して演奏します。非常に優雅な楽章です。後半に行くほど瞑想的な感じになってきます。

第3楽章 プレストのロンド形式の楽章です。ロンド主題は,カラっと明るいのですが,その他の主題は短調になったりして,変化に富んでいます。(2001/9/18)