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モーツァルト Mozart
3台のピアノのための協奏曲K.242(ピアノ協奏曲第7番)

ザルツブルクのエルンスト・ロードゥロン伯爵夫人とその二人の娘のために書かれた,3台のピアノのための協奏曲です。この伯爵の名前を取って「ロードゥロン」という名前で呼ばれることもあります。3台のピアノのうち,第3ピアノはかなり軽く扱われていますが,これはロードゥロン夫人の下の娘のジュゼッピーナのピアノの力量を考えての処置のようです。というわけで,かなり実用的な意図を持って作られた作品です。

この曲は,独奏者が3人もいるということで,いろいろな機会に何度か再演されています。モーツァルトが,パリを目指してマンハイムを出立する直前に親交のある人たちが餞別がわりに演奏したということもあります。当時,協奏曲はこのように社交のための道具として使われることがあったようです。

なおこのピアノ協奏曲は,フォルテ・ピアノのために書かれた曲と言われています。その他,2台のピアノ用に書き換えられた版もあります。

第1楽章 アレグロ,ヘ長調,4/4 協奏的ソナタ形式
オーケストラが元気の良い主題を呈示した後,3つのピアノが一緒に第1主題を演奏します。この第1主題は,前半と後半で対照的な性格を持っています。力強い前半は3台のピアノのユニゾン,後半は第1ピアノが演奏という形になっています。優雅に流れる第2主題の方は,3台のピアノで主題を持ち回ります。カデンツァはモーツァルト自身のものが残されています。

第2楽章 アダージョ,変ロ長調,4/4,2部形式
深い息遣いを持ったアダージョの楽章です。管弦楽のみによる演奏が続いた後,独奏ピアノ群が入ってきます。第1ピアノが主導する主調(変ロ長調)のメロディと第2ピアノが主導する属調(ヘ長調)のメロディなど繊細なメロディが次々と出てきます。

管弦楽が主調の属7和音を出した後,半小節の経過句を経て,全体が繰り返されます。この楽章にもモーツァルトによるカデンツァが残っています。

第3楽章 ロンドー,テンポ・ディ・メヌエット,ヘ長調,3/4,ロンド形式
A-B-A-C-A-B-Aの形のロンドです。メヌエット風のロンド主題は,3連符で舞い上がるような動きが特徴的です。このロンド主題が回帰する直前にそれぞれ即興的なアインガンクが入ります。第1回目の回帰の際は第1ピアノ,2回目が第2ピアノ,3回目が第1と第2がオクターブのユニゾンで演奏します。ここでも第3ピアノは冷遇されています。(2006/07/20)