モーツァルト Mozart

■ピアノ協奏曲第17番ト長調,K.453
モーツァルトが1784年(28歳の時)に書いたピアノ協奏曲6連作のうちの4曲目に当たります。この曲の特徴は,モーツァルトのピアノ協奏曲中唯一「ト長調」という調性を持つことと,第3楽章が変奏曲になっている点です。また,管楽器の活躍も目だっています。両端楽章の素朴で機嫌の良いメロディには,歌劇「魔笛」のパパゲーノ辺りが歌いそうな雰囲気があります。対照的に第2楽章は後期のピアノ協奏曲と共通する深い味わいを漂わせています。

第1楽章
冒頭,第1ヴァイオリンでまず演奏される第1主題の「タン,タカ,タンタン」という上機嫌なリズムはこの頃モーツァルトがやたらと使っていたものです。この頃の他のピアノ協奏曲にも良く出てくる「トレードマーク」です。どれも第1楽章で使われています。第2主題は半音的進行も交えており,翳りを持っています。続いて独奏ピアノが入ってくる第2の呈示部になります。第1の呈示部では出てこなかった新しい主題がピアノで演奏され,装飾的に進行した後,第2主題部になります。

展開部では,ピアノの3連符のアルペジオと管楽器の4分音符のアルペジオが交錯し,複雑な表情を見せます。途中ピアノで出てくる短調の新主題も印象的です。その後,再現部になります。カデンツァはモーツァルト自身のものが残っています。楽章全体に渡り,多彩な表情を持った主題が次々と出てきますので,いろいろな人物が出てくるオペラを観るような楽しさのある楽章です。

第2楽章
荘重で,瞑想するような気分で始まります。まず,木管楽器群が主題を呈示します。半音階進行も目立ち,しっとりとした気分に覆われます。続いて独奏ピアノが主題を呈示します。その後,急に短調に変わり,ドラマティックな表情を見せます。短調で始まる展開部では転調を繰り返します。ここで演奏されるカデンツァにもモーツァルトの自作のものが残っています。

第3楽章
「主題+5つの変奏+フィナーレ」という構成の楽章です。主題は「魔笛」のパパゲーノの歌を思わせるような楽しげなものです。オーケストラのみで呈示されます。第1変奏で初めて独奏ピアノが登場します。第2変奏は,ピアノが3連符のリズムを演奏します。第3変奏はカラオケのようにメロディがなくなり,和音の進行のみになります。第4変奏は短調に切り替わります。続いて,輝くような明るさを持った第5変奏になります。この気分の転換は大変効果的です。

オーケストラとピアノが掛け合いをするように進んだあと,プレストのフィナーレになります。ここで新しいメロディが出てきますが,役者が全員揃って早口で歌いまくるような,オペラの幕切れのようです。落ち込んだ後に突然はしゃぎまわる無邪気さは,映画「アマデウス」に描かれたようなモーツァルトの姿を思い出させてくれます。(2002/06/22)