モーツァルト Mozart

■交響曲第1番変ホ長調K.16

モーツァルトの交響曲には,旧全集版の番号に従って41番までの順番が付けられており,現在でもその番号で親しまれています。その記念すべき第1番がこの作品です。モーツァルトが本当にこの曲を最初に作曲したかどうかは不明ですがモーツァルト最初期の作品であることは変わりません。

この曲は1764年に作曲され,1765年にロンドンで初演されたと言われています。モーツァルト9〜10歳頃の作品ということもあり,当時モーツァルトがお手本としていたクリスティアン・バッハの影響を受けた作品となっています。そのスタイルは「急−緩−急」という3楽章形式です。習作的な作品ではありますが,その中に交響曲第41番「ジュピター」の音型が含まれているなど,暗示的なものも含んでいます。

第1楽章 モルト・アレグロ,変ホ長調,4/4,ソナタ形式
「ドー・ミー・ソソソソ...(移動ド唱法)」という可愛らしい第1主題がフォルテのユニゾンで演奏されて始まります。この主題の後半では静かに沈みこむような対照的な雰囲気になります。この対比が強調された後,陽気でおどけたような第2主題がヘ長調で出てきます。

展開部では第1主題が転調されて繰り返された後,ハ短調になります。再現部では第2主題のみが再現されます。

第2楽章 アンダンテ,ハ短調,2/4,2部形式
前半と後半がそれぞれ繰り返されます。オーボエとホルンが和音を響かせる中,ヴァオリンとヴィオラが3連符のリズムを刻みます。その上でバスがメランコリックな主題を演奏します。楽章全体がそういう手法で書かれています。

よく聞くとホルンの演奏するメロディの中に「ジュピター」交響曲の第4楽章の最初に出てくる「ドーレーファーミー」のジュピター音型が既に出てきている点が注目されます。このことと合わせて,少年の作品とは思えない霊感に溢れた楽章となっています。

第3楽章 プレスト,変ホ長調,3/8 
ロンド形式に近い形で新しい楽想が次々と現れて軽妙に展開されていきます。狩を思わせるような勇壮な主題がロンド主題として何回も登場します。(2005/05/22)