モーツァルト Mozart

■交響曲第35番ニ長調K.385「ハフナー」
モーツァルトには,「ハフナー」と名のつく曲が2つあります。この交響曲とハフナー・セレナードです。この「ハフナー」というのはザルツブルクの富豪の名前で,これらの曲は,このハフナー家のために書かれた曲ということを意味しています。

このハフナー交響曲も,当初,セレナードとして書かれたのですが(通常のハフナー・セレナードと区別するために「第2ハフナー・セレナード」とも呼ばれています),別の演奏会で交響曲が必要になったために,モーツァルトはこの曲を4楽章の曲に改変ました。その時,メヌエットと行進曲が取り除かれています。セレナードには,華やかな曲が多いのですが,この交響曲にも明るく祝典的な気分があふれています。

第1楽章 いきなり2オクターブも音が跳躍する冒頭のテーマは非常に印象的です。その後,行進曲風のリズムが続きます。ソナタ形式では,通常,主題が2つ出てきますが,ハフナー交響曲では,この壮麗な主題に対する第2主題が,はっきりとは出てきません。こういうケースはハイドンの交響曲にもよく見られます。展開部は,転調を重ね陰影に富んでいます。第1楽章の終り方は,ジュピター交響曲のフィナーレとも少し似ています。

第2楽章 非常に優美なアンダンテ(歩くような速さ)の楽章です。第2主題には,「笑いさざめくような」雰囲気があります。貴族の宴会の雰囲気にはぴったりの曲です。

第3楽章 力強さと優雅さを兼ね備えたメヌエットです。中間部は,ヴァイオリン,オーボエ,ファゴットによるのんびりとした歌になっています。

第4楽章 プレスト(急速に)で演奏されて,一気に終わってしまうフィナーレです。形式的には,ロンド形式とソナタ形式を融合させたような性格があります。弦楽器の弱音のユニゾン(みんなで同じメロディを弾く)で始まるさざめくような主題が何度も再現して登場します。この主題は,そのころ初演された歌劇「後宮からの誘拐」から取られています。軽妙なユーモアもあって,「フィガロの結婚」の序曲を思わせるような,モーツァルトの才気があふれています。(2001/9/28)