モーツァルト Mozart

■協奏交響曲変ホ長調,K.364

協奏交響曲というのは,独奏楽器が複数の協奏曲です。となると,「フルートとハープのための協奏曲」は協奏交響曲ではないのか?といわれそうですが...実ははっきりした定義はわかりません。原題は"シンフォニア・コンチェルタンテ"といいます。こちらの方がちょっと気取った響きがあるし,ゴロも良いので,曲のギャラントな雰囲気を表すには,こちらの方がぴったり来るような気がします。

この曲では,ヴァイオリンとヴィオラが独奏楽器として登場します。協奏曲ということで,外面的な華やかさもありますが,第2楽章などには,かなり重い雰囲気があります。楽章ごとに変化がある一方,曲全体としてのと一体感があるあたりが”シンフォニア”という呼称のついている由縁かもしれません。特に,短調の第2楽章から軽やかな第3楽章にスッと移っていく構成は見事です。「鬱状態から立ち直りたい時に,この最後の2つの楽章を聞くと良い」と書いてある本を読んだことがありますが,そのとおりかもしれません。ちなみに,この曲では,独奏ヴィオラの方が半音高く調律して演奏するようになっています。これは,ヴィオラを華やかに聞かせるためのモーツァルトの隠し技のようです。モーツァルト自身ヴィオラを演奏したそうですが,そのことと関係がありそうです。

編成は,弦楽合奏にオーボエ2本とホルン2本が加わっただけです。これは,他のヴァイオリン協奏曲などと同じですが,他のヴァイオリン協奏曲よりはかなり大人の雰囲気になっています。というわけで,モーツァルト作曲の弦楽器が独奏となる協奏曲の中では最高傑作と呼べそうです。

第1楽章 
アレグロ・マエストーソということで堂々とした雰囲気で始まります。第2主題は,ホルンとオーボエによるものです。その後,クレッシェンドで盛り上がっていくあたりは,当時の流行です(「マンハイム風」などと本には書いてあります)。通常の協奏曲同様,管弦楽だけで主題が演奏された後,独奏ヴァイオリンとヴィオラが登場します。2つの楽器が同時にメロディを演奏するのですが,その音がオクターヴ離れているので,何ともいえない輝きがあります。その後,いろいろと調性が違う新しい主題が次々と登場します。再現部では,ヴィオラとヴァイオリンの登場の仕方が逆になっていたりして,変化がつけられています。楽章の最後には,2つの独奏楽器によるカデンツァがついています。

第2楽章
深い憂いに包まれたセンチメンタルな感じのアンダンテの楽章です。2つの楽器が嘆きあい,静かに励ましあっているような雰囲気があります。ここでも楽章末にカデンツァがついています。

第3楽章
プレストのロンドです。前の楽章が憂鬱な感じだったので,この気分転換にはハッとします。前の2楽章が異例でここで普通のモーツァルトに戻ったとも言えそうです。ただし,ロンドとしては,かなり変則的な構成で,活発なメロディが次から次へと出てくるようになっています。最後にカデンツァ風に独奏楽器が活躍して,華やかに曲を閉じます。(2001/11/10)