モーツァルト Mozart

■ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216
モーツァルトの作曲したヴァイオリン協奏曲中第5番と並んで演奏される機会の多い曲です。きちんとした単純明快な形式の中にフランス風の優雅な雰囲気が盛り込まれた美しい曲です。独奏ヴァイオリンとオーケストラとの対話,管楽器の多用などモーツァルト独自のスタイルも打ち出されています。この曲は技術的にはやさしいため,プロの奏者にとっては違った面での難しさがあるようです。

第1楽章 まず,強弱の対照のはっきりした第1主題が出て来ます。この部分は,主役を待つオペラアリアの序奏のような雰囲気がありますが,実際,同じ時期に書かれた「牧人の王」というオペラのアリアの旋律を転用したもののようです。第2主題はオーボエとホルンによって穏やかに出て来ます。しばらくすると独奏ヴァイオリンが登場し,第1主題を演奏します。ここでは新しいメロディも出て来ます。展開部は,モーツァルトのこれまでのヴァイオリン協奏曲よりも充実したものになっています。短調へのかげりも見られます。オーボエとの美しい絡み合いも聴きものです。型どおりの再現部のあとカデンツァが演奏されます。カデンツァは,モーツァルト自身のものは残っていません。イザイのものとS.フランコのもが演奏される機会が多いようです。

第2楽章 アダージョの緩徐楽章です。弦楽器は楽章全体に渡り弱音器がつけて演奏されます。これに合わせてか,管楽器はオーボエの代わりにフルートが使われています。全体に牧歌的で天国的な美しさのあふれた楽章です。主題は第2ヴァイオリン,ヴィオラの3連符と低弦のピツィカートの上に第1ヴァイオリンで演奏されます。ここでも中間部は短調へのかげりをみせます。再現部の後,カデンツァが出てきますが,その後に独奏ヴァイオリンで再度第1主題が出てくる点が独特な点です。

第3楽章 ロンド楽章です。譜面には,フランス風に「ロンドー Rondearu」と書かれています。文字通り,フランス的なポ・プーリ(接続曲)となっており,次々と民謡風の楽しげなメロディが出て来る,大変表情豊かな楽章です。ロンド主題は3/8の快活なものですが,所々かげりを見せます。途中,曲調が一転し,アンダンテ,ト短調に変わります。この部分は伴奏がピツィカートで演奏されるのが印象的です。その後,元気を取り戻したかのように,アレグレット,ト長調に変わります。これは民謡調の素朴なメロディです。この主題は「シュトラスブルガー」という古い旋律と同じなので,この曲は「シュトラスブルガー協奏曲」と呼ばれることがあります(第4番だという説もあります)。最後に,楽章の最初と同じアレグロに戻ります。最後はオーボエとホルンの響きの中で静かに終わります。(2002/8/3)