モーツァルト Mozart

■ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K.218
モーツァルトは,ピアノ協奏曲の場合と違って,ヴァイオリン協奏曲は若い頃にしか書いていません。通常,モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は5曲あるといわれていますが,すべて同じような時期に(すべて20歳前です)書かれています。そのうち,3番と5番が特によく知られていますが,4番はそれらに次いで有名です。4番は,「軍隊」というあだ名で呼ばれることがありますが,それは,第1楽章冒頭の主題のリズムと音の動きに軍隊ラッパのような雰囲気があるからです。ただし,このあだ名にこだわる必要はなく,明るく,若々しい雰囲気を気軽に味わう方が良いでしょう。調性は,ヴァイオリンの曲に多いニ長調で,全体は輝くような明るさと変化に富んでいます。技巧的にも3番よりは,難しくなっているようです。オーケストラの方は,弦楽器群以外には,オーボエとホルンが加わるだけですので,かなりこじんまりとしています。

第1楽章 まず,この軍隊的な主題がオーケストラによって演奏されます。この印象的な主題ですが,その後,ソロ・ヴァイオリンで演奏された後,再現されません。こういう使い方は珍しいようです。この軍隊の主題の後,いろいろと新しい主題が出てきます。ヴァイオリンが登場してからは,オーケストラの方は時々合いの手を入れるぐらいで,それほど派手に活躍はしません。反対に,ヴァイオリンの方は,華やかに弾きまくります。カデンツァが演奏された後,1楽章が結ばれます。

第2楽章 アンダンテ・カンタービレ,ということで穏やかなメロディがオーケストラとヴァイオリンによって順に歌われます。続いて,いくつか主題が出てきますが,ヴァイオリンのスタッカートの伴奏の上に軽やかに独奏ヴァイオリンが歌う主題が印象的です。後半は,前半と同様の主題が繰り返されます。カデンツァが演奏された後,第2楽章は終わります。

第3楽章 ロンドですが,テンポがあれこれ変わり,かなり変則的な構造になっています。
(A)ソロ・ヴァイオリンがスタッカートで優雅なロンド主題を演奏します。以後,アンダンテのテンポで何度も再現して登場します。
(B)テンポがアレグロに変わり,軽快な主題が続きます。この部分はいつもロンド主題(A)の後に出てきます。
(A)(B)が変形されて繰り返された後,ミュゼットというフランス風の舞曲のリズムによる変奏になります。ヴァイオリンが開放弦で同じ音を鳴らしながら,素朴で優雅な感じの主題を演奏するあたりが印象的です。
以下,(A)(B)(A)(B)の順に,カデンツァを交えながら,それぞれ変形されたり省略されながら再現され,静かに曲が終わります。(2001/9/18)