第9番 |
僧侶たちの行進(Sar,僧侶) |
アンダンテ |
へ長調 |
2/2 |
椰子の茂る森の場面です。ザラストロが僧たちを従えておごそかに進んできます。柔らかな雰囲気を持った音楽です。
その後,序曲の中に現れた「3つの和音」が演奏され,ザラストロと僧たちの相談が始まります。ザラストロは僧たちに,タミーノが試練を受けたいと望んでいることを告げ,タミーノの願いを叶えさせようといいます。その後,再度,「3つの和音」が響きます。 |
第10番 |
合唱付きアリア(Sar,僧侶) |
アダージョ |
ヘ長調 |
4/4 |
「イシス,オリシスの神よ,願わくば2人に叡智の心を与えたまえ(O Isis und Osiris, schenket der Weisheit
Geist dem neuen Paar!」とザラストロが歌います。敬虔で落ち着いた調べを持つアリアです。途中,合唱による祈りの声も挟まれます。
その後,場面が変わり,両側に古代エジプト風の門がある寺院の場になります。タミーノとパパゲーノが案内されて登場します。ここに弁者と僧侶たちが登場し,タミーノに最後の決意を正します。また,パパゲーノには「お前に似合いの娘をあずかっている。欲しければ沈黙の試練を受けるように」と語ります。渋っていたパパゲーノも考えを改めます。 |
第11番 |
ニ重唱(Pri) |
アンダンテ |
ハ長調 |
2/4 |
2人の僧がパパゲーノに「女のたくらみから身を守れ(Bewahret euch vor Weibertrucken, dies ist des Bundeserste
Pflicht」と女の誘惑に乗らぬように戒める歌を歌います。 |
第12番 |
五重唱(Pgno,Tam,S1-3) |
アレグロ |
ト長調 |
2/2 |
奈落から夜の女王の3人の侍女が現れ「これはどうしたことでしょう(Wie,wie,wie...)」とタミーノとパパゲーノを誘惑する歌を歌います。タミーノは断固として退けます。
あきらめて去ろうとする3人に僧たちが合唱で「地獄に落ちろ」と叫ぶと雷鳴がし,侍女たちは奈落に飛び込みます。パパゲーノも地面に倒れます。
弁者が登場し,タミーノの態度をたたえ,さらに危険な試練に向かうために彼に目隠しをします。パパゲーノもついていきます。
舞台が変わり,月光の下,美しい庭園の東屋の場になります。パミーノがまどろんでいる中,モノスタートスが忍び寄ります。 |
第13番 |
アリア(Mon) |
アレグロ |
ハ長調 |
2/4 |
フルートとピッコロによる軽やかな前奏に続いて,モノスタートスが軽やかにひそやかにスピード感たっぷりに「恋すりゃだれでもうれしいよ(Alles fuhlt der Liebe Freuden schnabelt tandelt herzet, kusst)」と歌います。歌詞の内容は,やや黒人蔑視的なところがありますが,鮮やかな印象を残す曲です。モノスタートスは,このオペラの中ではもっとも冷たく扱われれいる損な役回りですが,それでもこのような魅力的なアリアが用意されいる点がモーツァルトの素晴らしさともいえます。
モノスタートスがひっそりと忍んでいると,雷鳴がとどろき,夜の女王が姿を現します。夜の女王はモノスタートスを退け,パミーナの前に立ち,パミーナに「ザラストロを刺せ」と短剣を渡します。 |
第14番 |
アリア(Q) |
アレグロ・アッサイ |
ニ短調 |
4/4 |
「復讐の心は地獄のように燃え(Der Holle Rache kocht in meinem Herzen)」と夜の女王が復讐を歌う,疾風怒涛のアリアです。第1幕で歌われた夜の女王のアリアよりもさらに有名な曲で,「魔笛」全曲中の最大の聞き所と行っても良い部分です。暗い情熱を持って始まりますが,途中でヘ長調に変わり,華やかなコロラトゥーラの技巧が炸裂します。最高音のヘ音も印象的です。音程を取るのが非常に難しい曲ですが,うまく歌われると人間業を超えた超人ぶりに唖然とするような感動を味わうことができます。最後は短調に戻りドラマティックに締めくくられます。
この曲の後,夜の女王は去り,パミーナは「ザラストロを刺すなどできない」と物思いに沈みます。そこにモノスタートスが入ってきて,短剣を奪い,「私に従わないとザラストロに密告するぞ」と脅します。そこにザラストロが入ってきて,モノスタートスを押さえ,追放します。モノスタートスはその後,夜の女王陣営に寝返ります。ザラストロは,「母の罪を許して」というパミーノを優しく慰めます。 |
第15番 |
アリア(Sar) |
ラルゲット |
ホ長調 |
2/4 |
夜の女王のアリアによる,超高音を駆使したアリアの直後に,今度はザラストロによる超低音を響かせるアリアが続きます。夜の女王が「復讐」を薦めた後,「この神聖な聖堂では復讐を思う人はいない(In diesen heil'gen Hallen)」と歌い始めるコントラストも心憎いばかりです。
ザラストロは,あまりにも「ご立派過ぎて...」というキャラクターですので,近年の演出では,それを逆手に取られることなどもありますが,この曲のおごそかさにしみじみと語りかけるような歌は「やっぱり立派なお方なのだ」と感じさせるのに十分の魅力を持っています。曲のクライマックスで重低音が出てくるのが特徴のこれもまた大変有名なアリアです。
その後,ザラストロはパミーナを伴って退場します。
大広間の場となり,僧侶たちに導かれてタミーノとパミーナが入ってきます。2人は沈黙の行を続けます。タミーノが止めるのにも関わらずパパゲーノはしゃべりまくっています。そこに水の入った杯を持った老婆が入ってきます。パパゲーノが話しかけると「年齢は18歳と2分で,パパゲーノの恋人だ」と答え,パパゲーノは驚きます。激しい雷鳴が起こり,彼女の姿は消えます。懲りたパパゲーノは今後口をきかないことにします。 |
第16番 |
三重唱(Boy) |
アレグレット |
イ長調 |
6/8 |
「お二人ともよくきましたね」と愛らしくザラストロの国に来たことを歓迎をする三重唱です。食卓にご馳走を置いて,飛び去ります。
パパゲーノは食物に喜び,タミーノは「魔笛」を吹きます。その音にひかれてパミーナが登場しますが,修行中なので去ってくれと目で合図をします。パパゲーノも口に食物を詰めていてしゃべることができません。タミーノに冷たくされたと勘違いしたパミーナは絶望します。 |
第17番 |
アリア(Pam) |
アンダンテ |
ト短調 |
6/8 |
「愛の喜びは露と消え(Ach, ich fuhl's)」と歌う有名なアリアです。比較的素朴で明るい歌が続く中で,この曲の持つ悲しみに満ちた情感は大変強い印象を残します。モーツァルトのピアノ協奏曲の第2楽章などに出てきそうな,揺れる6/8拍子で複雑な思いを表現します。
私もしゃべらないことができた,ととんでもない時にパパゲーノは自我自賛します。その後,例の「3つの和音」が響き,タミーノとパパゲーノは出て行きます。
場面はピラミッドの地下を思わせる場に変わります。 |
第18番 |
合唱(僧侶) |
アダージョ |
ニ長調 |
2/2 |
「おお,イシスよ,オシリスよ,なんたる喜び!」と最高神を讃える,おごそかで力強い響きを持った宗教曲の一部のような合唱曲です。
ザラストロは,まだ2つの危険な道が残されていることをタミーノに語ります。パミーナと別れを告げさせるために彼女も呼び寄せますが,ここでもタミーノは無言の行を続けます。 |
第19番 |
三重唱(Pam,Tam,Sar) |
アンダンテ・モデラート |
変ロ長調 |
2/2 |
「愛する人よ,もうあなたを見られないでしょうか?」と別れを嘆くパミーナ,「喜びの心でお前たちが会う時が来る」と励ますザラストロ,試練に立ち向かうタミーノと三者三様の心の中を歌う三重唱です。明るい響きの中に複雑な情感が盛り込まれた素晴らしい曲です。
3人が退出し,パパゲーノがタミーノを探して入って行くと。「下がれ(Zuruck)」の声と雷鳴が聞こえてきます。どこに行ってもそうなのでパパゲーノは泣き始めます。そこに弁者が登場し,パパゲーノに語りかけます。パパゲーノは,「ワインを1杯飲みたい。それと...」と語り,次の曲に続きます。 |
第20番 |
アリア(Pgno) |
アンダンテ−アレグロ |
ヘ長調 |
2/4−6/8 |
パパゲーノが欲しいのは「恋人か女房か(Ein Madchen oder Weibchen)」と歌いはじめる,非常に有名なアリアです。グロッケンシュピールによる可愛らしい序奏の後,3節からなる素朴な歌が始まります。親しみやすさの中にうっとりするような甘さを持った名曲です。各節とも,途中でテンポが速くなり,ワインをもらって上機嫌となったパパゲーノの天衣無縫な気持ちを表現します。シンプルな曲ですが,パパゲーノ役の「歌による演技力」も試されるアリアです。
ここで先ほどの老婆が現れ,杖にすがって踊ります。彼女が手を求めるので,パパゲーノが仕方なく手を差し出すと老婆が若い娘に変身します。パパゲーノは「パパゲーナ」と呼びかけますが,弁者にさえぎられます。弁者はパパゲーナを連れ去り,舞台は小さな庭園に変わります。 |
第21番 |
終曲。第1幕同様,ここから幕切れまではセリフなしで音楽が続きます。 |
21−1 |
四重唱(Boys,Pam) |
アンダンテ |
変ホ長調 |
2/2 |
木管とホルンによる前奏の後,空中を飛んできた3人の少年が「まもなく朝を告げる太陽が黄金の道に輝くだろう」と歌い始め,苦しむパミーナを見守ります。
パミーナは母親からあずかった短剣を手にして,思いつめた雰囲気になります。自らを刺そうとした瞬間に,3人の少年が飛び出して止めます。音楽はアレグロに変わり,少年たちはタミーノはあなたを愛していると告げます。
2つの大きな岩山の場になります。1つは滝を持ち,もう1つは火が燃え盛っています。2人の武装した男がタミーノを中に導きます。 |
21−2 |
二重唱(Arm) |
アダージョ |
ハ短調 |
2/2 |
まるでバッハの宗教曲を思わせるようなおごそかな雰囲気の音楽です。序奏に続いて,弦楽器がスタッカートでフガートの旋律を演奏します。これを伴奏として2人の武装した男がプロテスタントのコラ−ルを転用した「苦難もてこの道を来るもの,火,水,大気,そして大地によって清められる」と旋律を歌います。このメロディはオクターブ・ユニゾンという珍しい手法で書かれており,古風な気分とゾッとする気分を同時に感じさせてくれます。
タミーノはこれに勇ましく答え,出発しようとします。そこにパミーナが現れ,2人は抱き合います。 |
21−3 |
四重唱(Pam,Tam,Arm) |
アンダンテ |
ヘ長調 |
3/4 |
「私のタミーノ!」「私のパミーナ!」と高らかに呼び合い,愛と魔笛の力で恐ろしい試練の道を克服しようとします。二人の武装した男も励まします。その後,2人は火の中へと入っていきます。 |
21−4 |
行進曲と二重唱(Pam,Tam) |
アダージョ |
ハ長調 |
4/4 |
タミーノが魔笛を吹き,ティンパニが弱く伴奏する中,2人は火の中に入ります。道行の場という感じの場面です。火から出てきた後,抱擁して動きません。魔笛の力で火の行を切り抜けたことを歌った後,再度,魔笛を吹き,今度は2人は水の中に入ります。門が開き,明るく輝く寺院への道が見え,試練が終わったことが暗示されます。 |
21−5 |
合唱(僧侶) |
アレグロ |
ハ長調 |
4/4 |
2人の勝利を祝福する壮大な合唱が,寺院の内側から聞こえてきます。その後,音楽が盛り上がり,試練の場が終了します。
再び場面は庭園の場になります。 |
21−6 |
四重唱(Pgno,Boy) |
アレグロ |
ト長調 |
6/8 |
パン笛を吹き「パパゲーナ!パパゲーナ!」と呼びかけながら,パパゲーノが登場します。辺りを見回しますが,一向に現れません。3つ数えて現れなかったら首を吊って死のうと決心します。まず元気よく「1(Eins)」と掛け声をかけますが,「2(Zwei)」,「3(drei)」と進むにつれてカウントがゆっくりになる辺りがパパゲーノらしいところです。この部分からしばらくは,子供でも大人でも楽しめ,感動できる,全曲中のいちばんのクライマックスとも言える場が続きます。
3つ数えても出てこないので,音楽が暗い短調に変わり,いよいよ「さらば,偽りの世よ」と言って,パパゲーノは本気で首を吊りかけます。
ここで音楽がハ長調に変わり,3人の少年が現れ,「鈴を鳴らせ」と大切なヒントを教えてくれます。パパゲーノが「ひびけ,鈴よ響き渡れ(Klinget, Glocken)」と歌い,グロケンシュピールが成り始め,何か良いことが起こりそうな雰囲気に一転します。まさに音楽の持つ魔法の力が表現された場です。
ここで,3人の少年が「パパゲーノ見てごらん」とパパゲーナを連れて再度入ってきます。 |
21−7 |
二重唱(Pgno,Pgna) |
アレグロ |
ト長調 |
2/2 |
ここで歌われるのが有名な「パ,パ,パの二重唱」です。この曲は他に例えようもない非常に独創的な音楽です。弦楽器の軽快な伴奏に乗ってパパゲーノが「パ,パ,パ」と歌い始めると,パパゲーナが「パ,パ,パ」と答え,次に「パ,パ,パ,パ」と歌うとやはりパパゲーナが「パ,パ,パ,パ」と同じ音型で答えます。愛する二人が出会って最初は声にならない雰囲気を楽しくかつ非常に音楽的に描いています。すべてのオペラの愛の二重唱の中でももっとも感動的な曲だと私は思います。
このやり取りが続いた後,音がは勢いを増し,早くも彼らの子供の話となります。最後は歓喜の中で「パ,パ,パ,パ...」の連呼となって曲が終わります。 |
21−8 |
五重唱(Q,S1−3,Mon) |
モデラート |
ハ短調 |
4/4 |
タミーノ−パミーナ組/パパゲーノ−パパゲーナ組はハッピーエンドになったので,夜の女王一派の方の決着がここで付けられます。
モノスタートスが導いて,夜の女王,3人の侍女が入ってきます。ひっそりと忍び込むような音楽が続きますが,雷雨が急にやってきて,舞台を太陽の世界に一転させ,夜の女王一派は地底に消えます。 |
21−9 |
合唱(Sar,僧侶) |
アンダンテ |
変ホ長調 |
4/4 |
ザラストロが登場し,夜の世界が消えたことを宣言し,その後,感謝の合唱となります。音楽がアレグロに変わり,壮麗な合唱の中で全曲が締めくくられます。 |