成田為三 Naritai
■浜辺の歌
1916年に作曲されて以来,日本中で親しまれている愛唱歌です。演歌に代表されるように日本の曲には,短調の曲が非常に多いのですが,この曲は大変爽やかな曲です。90年近く前に作曲された曲とは思えないほどの新鮮さがあります。そのせいか,外国人の器楽演奏家がこの曲を演奏することも多いようです。個人的には,トランペットなどで演奏してもピッタリ来るのではないかと思っています。

曲は,打ち返す波を描写するような6/8拍子の揺れるリズムの伴奏で始まります。「あした浜辺をさまよえば...」の歌詞で始まるメロディはとても滑らかで自然な起伏を持っています。とても晴れやかな浜辺の気分があるのですが,その中にどこか哀愁が漂っています。「風の音よ...」で大きく盛り上がった後,最初のメロディが戻ってきて静かに終わります。

この曲は音楽雑誌の教材用として掲載された林古渓の詩に当時全く無名だった成田為三が曲を付けたものです。成田はこの曲の他にも「かなりや」「ちんちん千鳥」といった愛唱歌を作曲していますが,何と言ってもこの「浜辺の歌」がいちばんの代表作です。(2003/12/09)