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ニコライ Nicolai
歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
この曲の作曲者のオットー・エーレンフリート・ニコライ(Otto Ehrenfried Nicolai)は,1810年にドイツで生まれ,1849年に没した作曲者です。現在知られているのは,ほとんどこの曲のみですので,むしろ指揮者として有名といって良い方です。

ニコライは,主にウィーンで活躍し,1842年にウィーン・フィルの前身となるフィルハーモニー協会を設立しています。そのためもあって,この作品は,時々ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートなどでも取り上げられることがあります。CD録音でもハンスクナッパーツブッシュ指揮のものをはじめ,ウィーン・フィル演奏によるものがいくつか残されています。

この曲の原作は,ヴェルディの同名の歌劇でも知られているシェイクスピアの「ファルスタッフ」です。ウィンザーが舞台という点は同じですが,かなりストーリーを変更しているようで,ドイツの伝統の上にイタリアのオペラ・ブッファ的スタイルを乗せた作品ということです。歌劇の上演頻度としてはヴェルディの作品には劣りますが,この序曲だけは,とてもよく知られています。

曲はいくつかの部分から成っていますが,歌劇の第3幕第2場のウィンザーの森の場面の音楽が主に使われています。まず,ゆったりとしたロマンティックな感じの序奏で始まります。落ち着いてはいるけれども,人懐っこさを持った音楽です。

その後,ちょこまかとした感じの音型が続く部分になり,音楽が大きく盛り上がり,歌劇の序曲らしいウキウキとした感じの部分になります。流れるような美しいメロディが出てきた後,ファルスタッフをやり込めるような感じの快活な音楽が続きます。シンバルを含む華やかで喜劇的な部分の後,音楽が短調に変わり,少しハンガリー風を思わせる感じになります。この辺りの音楽の繋がり方には,シュトラウス・ファミリーの音楽を思わせるところがあります。

その後,これまで出てきたいくつかのメロディが再現されます。最後は,シンバルを含む華やかな音楽で盛り上がり,元気良く締めくくられます。(2008/01/06)