OEKfan TOP > 曲目解説集  Program Notes
オッフェンバック Offenbach
ジャクリーヌの涙 Les larmes du Jacueline
ロッシーニから「シャンゼリゼのモーツァルト」と讃えられていたオッフェンバックは,幼い頃からチェロにも優れた才能を発揮していました。現在,オッフェンバックといえば,「天国と地獄」「ホフマン物語」に代表されるオペラ作曲家として知られていますが,大成する前はむしろチェリストとして知られていました。「チェロのリスト」という異名を取り,その名人芸でサロンで人気を博していました。そのこともありオッフェンバックは,生涯にチェロのための作品を沢山作曲しています。その中の1曲がこの作品です。

この曲は「森の調べ」と題された2曲からなる曲集のひとつですが,作曲年代は分からず,1980年代半ばにウェルナー・トーマス=ミフネの校訂によるチェロとピアノ用の楽譜が出版された後,知られるようになった「知る人ぞ知る」名曲です。

リート形式で書かれた作品で,切々と訴えかけてくる哀愁に満ちたメロディが深い感動を残す作品です。その悲しみの表情が,曲の途中から次第に,慰撫するような明るさを帯びてくる辺りも感動的です。ピアノ伴奏版以外に,ウェルナー・トーマス=ミフネ自身による弦楽合奏とチェロによる版もよく知られています。(2007/01/04)