OEKfan TOP > 曲目解説集  Program Notes
ピアソラ Piazzolla
ブエノスアイレスの四季
ピアソラは,「ブエノスアイレスの...」というタイトルを持つ4曲の作品を書いています。1965年に,第1作の「ブエノスアイレスの夏」を書いたときには,「四季」になる予定はなかったのですが,1969年に「秋」「冬」が書かれ,最後に19 年に「春」が書かれて「四季」となりました。クラシック音楽の世界では,ヴィヴァルディの「四季」が有名ですが,それと組み合わせるような形で,4曲セットで演奏されるコンサートやCDも出てきています。

■ブエノスアイレスの夏 Verano porteno
「ブエノスアイレスの四季」シリーズの第1作。1965年に劇作家アルベルト・ロドリゲス・ムニョスから新しい舞台のために依頼されて,ブラジルからの帰国途中の飛行機の中で作曲した作品です。ブエノスアイレスの,気だるい暑い夏の雰囲気を表現しています。

なお,このシリーズの原題中のporteno(ポルテーニョ)というのは,「ブエノスアイレスの」という意味の形容詞です。

■ブエノスアイレスの秋 Otono porteno
1969年頃発表された「ブエノスアイレスの四季」シリーズの第2作。開店したばかりのライブハウス「ミケランジェロ」で五重奏団によって演奏されてました。

第1作「夏」が作られた後ピアソラ自身大きなスランプを経験していますので,「夏」と「秋」は,そのスランプ突入前後に書かれた作品ということになります。躍動的な第1主題とメランコリックな第2主題の対比という構成は,「夏」と同様です。

■ブエノスアイレスの冬 Invierno porteno
「ブエノスアイレスの春」と共に,1969年から半年間ロングランしたレジーナ劇場でのピアソラ五重奏団とアメリータ・バルタールのリサイタルで初演された作品です。

「四季」の中でも特に美しい曲です。暗い雰囲気で始まった後,最後にバロック音楽を思わせるメロディが出てきます。「春」を予感させるこの部分のコード進行(パッヘルベルのカノンと似た感じ)は大変印象的です。ピアソラ五重奏団のヴァイオリン奏者のアグリはこの曲では,ヴァイオリンではないくヴィオラを演奏しているのも特徴です。

この「四季」シリーズでは,ピアソラ自身は,「冬,夏,秋,春」の順番に演奏していたようです。この曲を特に気に入っていたからかもしれません。なお,この曲には後にエラディア・ブラスケスによって歌詞が付けられています。

■ブエノスアイレスの春 Primavera porteno
「冬」と同じ時期に初演された作品。「四季」シリーズの中では,いちばん先端的な雰囲気を持った作品です。キビキビとした現代的な雰囲気が特徴的な作品となっています。
(2006/07/29)