プーランク Poulenc

■クリスマスのための4つのモテット

20世紀中盤に活躍したフランスの作曲家プーランクは,いろいろな楽器のために沢山の曲を作っていますが,その中でも声楽作品は重要な位置を占めています。プーランク自身,カトリックの家庭に生まれたこともあり,宗教的な作品も沢山書いていますが,1936年に友人のフェルーを交通事故で失って以来,さらに熱心な信者となり,宗教合唱曲を書くようになりました。この「クリスマスのための4つのモテット」という無伴奏の合唱曲はプーランクのこの分野の代表的な作品です。

この曲は4声の合唱のための曲で,4つの曲からなっています。歌詞はラテン語です。20世紀の曲とは思えないほど,均整のとれた美しさを持った作品です。

第1曲 おお,大いなる神秘よ O magnum mysterium
クリスマス当日第2朝課のための合唱(詩:クリスマス用頌歌)。曲は半音的な音の動きを含む神秘的な合唱で始まります。続いてソプラノに美しい旋律が出てきます。このメロディは何回か出てきます。全体にひっそりと歌われ,静かで神秘的なクリスマスの雰囲気を伝えます。

第2曲 羊飼いたちよ,汝らが見たものを語れ Quem vidistis pastores dicite
クリスマス当日第1朝課のための答唱(詩:「ルカによる福音書」(2-17〜18))。第1曲よりはテンポは速くなっています。和音的な音の動きが中心となっている曲です。曲は段々と高揚していきます。

第3曲 賢人ら,星を見て Videntes stellam
クリスマス週間第2日,晩課の「マニフィカト」の答唱(詩:「マタイによる福音書」(2-10〜11))。歌詞に「星を見て」という言葉があるとおり,夜の雰囲気を持った曲です。

第4曲 今日キリストは生まれぬ Hodie Christus natus est
クリスマス当日,「マニフィカト」の答唱(詩:「ルカによる福音書」(2から))。これまでの3曲よりは,軽快な感じのある曲で,キリストの降誕の喜びを表現しています。最後の曲らしく,ハ長調で「ハレルヤ」と歌われ,晴れやかに結ばれます。

(参考)
合唱名曲ガイド110:ア・カペラによる混声合唱/松原千振[ほか]著.音楽之友社,2001
(2002/07/07)