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プーランク Poulenc
オルガン,弦楽とティンパニのための協奏曲 ト短調

「協奏曲」と名の付いた曲にもいろいろな曲がありますが,意外に少ないのがオルガン協奏曲です。オルガンという楽器自体,一つのオーケストラに匹敵するぐらいのゴージャスさを持っているために,「協奏曲」にはなじみにくいということなのかもしれません。パイプ(=管楽器)の集合体ということで,特に管楽器とかぶってしまうことが多いのもオルガン協奏曲を作る際のネックになるようです。

というようなことを考えたのか,フル編成のオーケストラとではなく,弦楽器・打楽器とオルガンという組み合わせによる協奏曲を書いたのがプーランクです。オルガン協奏曲といえばヘンデルの曲が有名ですが,それと並ぶ名曲がこの作品です。

この曲は,1936年頃に書かれ,1939年6月に,「レクイエム」の作曲家として知られるモーリス・デュリュフレの独奏と,ロジェ・デゾルミエール指揮パリ・フィルハーモニック協会室内管弦楽団によって初演されています。

他のプーランクの作品同様,全編を通じて新古典主義的な明快な雰囲気があると同時に,繊細な音色の変化と力強さと宗教的な深い味わいとを兼ね備えています。それらが混じりあい,一種,聖と俗とが結びついたような,独特の味わいを持った作品となっています。

全曲は,急−緩−急の3つの楽章に分けることも可能ですが,切れ目なく演奏され,主要な主題が繰り返し登場する循環的手法を取っているので,単一楽章とも考えられます。曲は,テンポの変化に応じて,以下のとおり,7つぐらいの部分に分けることができます。

1.アンダンテ
曲は,いきなりオルガン独奏によって,バッハのオルガン曲を思わせる堂々とした感じで始まります。少々尊大な感じのする「トッカータ」主題は大変強いインパクトがあり,「オペラ座の怪人」か何かが始まるような大仰さがあります。静かな雰囲気になった後,弦楽器が広がりのあるメロディをアンダンテで演奏します。これは,「カルメル派修道女の対話」の音楽と関連があります。

2.アレグロ・ジョコーソ
激しいアクセントが付いたフォルティシモではじまります。これが転調しながら短調で繰り返されます。その後,輝きのある華やかな雰囲気で曲は進んでいきます。

3.アンダンテ・モデラート
プーランクの曲によくあるように,音楽の流れが暴力的に中断された後,イ長調のアンダンテ・モデラートの部分になります。この部分では,付点リズムを持った長いオルガン独奏に続いて,弦楽器群によるゆったりとした歌が現れます。この部分は,モーツァルトの短調作品のような悲壮感を帯びながら展開され,次第に熱くなっていきます。

4.アレグロ・モルト・アジタート
ティンパニの一撃とともに,多調的進行の部分となります。この部分は曲の冒頭部のモチーフを変形したものです。比較的速いテンポで進みますが,最後は静かな雰囲気に落ち着きます。

5.非常に穏やかにレント
瞑想的な部分となります。「非常に優しく,そして明るく」と指示された美しいカンティナーレが続きますが,突然,オルガンが重厚な和音を力強く呈示し,次の部分へと移っていきます。

6.アレグロ
ト長調となり,再度,アレグロの快適なテンポに戻ります。同じ音型を何回も何回も繰り返しながら,どこか諦めたような独特の雰囲気を持って進んで行きます。

7.ラルゴ
そして,冒頭のトッカータの尊大なモチーフが再現します。ただし,これは一瞬だけで,すぐに静かな葬送行進曲の雰囲気に変わります。崇高なムードが続いた後,最後に「カルメル派修道女」のメロディが叫ぶように出てきて,全曲が閉じられます。

(参考)
プーランク/オルガン協奏曲,田園のコンセール(マルティノン指揮フランス国立放送管弦楽団,マリー=クレール・アラン(オルガン))のCD(WPCC-5049)の解説

(2009/01/29)