プロコフィエフ Prokofiev

■子供のための音楽物語「ピーターと狼」,op.67

プロコフィエフの代表作です。タイトルにあるとおり子供のために書かれた曲です。子供向けの童話をナレーターが語り,それに合わせてオーケストラが各場面に合った音楽を演奏する形で進行します。この作品で特徴的なのは,物語の登場人物それぞれにテーマ音楽があり,それを別々の楽器が担当している点です。このテーマ音楽はワーグナーのオペラで使われているライトモチーフと同じような働きをします。次のような具合です。

  小鳥:フルート/あひる:オーボエ/猫:クラリネット/おじいさん:ファゴット
  狼:ホルン三重奏/ピーター:弦楽合奏/猟師の銃声:ティンパニと大太鼓

それぞれ,とても分かりやすい楽器の使用法です。物語に先だって,これらのモチーフの紹介がありますが,この辺はブリテンの「青少年のための管弦楽入門」と似たような雰囲気があります。

物語は次のような展開です。

 朝,ピーターが広い草地に出ていく。小鳥,あひるの登場。「空を飛べないおまえが鳥だなんて:」「泳げないおまえが鳥だなんて」という絡み合いがあります。そこに猫が登場し,小鳥に忍び寄る。ピーターが「危ない」と叫び,小鳥は舞い上がる。
 おじいさんが不機嫌そうに登場。「森から狼が来たらどうする」と小言。ピーターは耳を貸さない。ピーターが立ち去ったとたん,本当に森から狼が登場。猫は木に登ったが,あひるは狼に捕まり,飲み込まれる。狼は小鳥と猫も狙おうとしている。
 ピーターは知恵を絞り,狼を捕まえるアイデアを考える。小鳥におとりになってもらい,そのスキにしっぽを縄で捕まえる。縄の一方を木に縛りつけ捕獲に成功する。その時,森から猟師が登場し,銃声が鳴る。ピーターは「撃たないで。僕たちが捕まえたんだ」と叫ぶ。
 その後,お祝いの行進になる。それぞれの登場人物のモチーフが順に出てくる。打楽器や金管楽器が加わり華やかな雰囲気になるが,よく注意して聞いてみると,狼のお腹の中からあひるの声が聞える。最後は弱音からクレッシェンドしていき,力強く結ばれる。

この曲は,ナレーターの人選が大きなポイントになります。レコーディングでは,まさにセールスポイントとなっています。坂本九,ショーン・コネリー,レナード・バーンスタイン,板東玉三郎などありとあらゆる人が担当しています。(2002/7/30)