プロコフィエフ Prokofiev

■古典交響曲(交響曲第1番)ニ長調,op.25
プロコフィエフの作曲した曲の中では,「ピーターと狼」と並んで非常によく親しまれている名曲です。この曲は作曲者自身「古典交響曲」とだけ呼んでおり,「交響曲第1番」とは一言も書いてはいないのですが,第2番以降は番号が付いていますので,自動的に第1番ということになります。

プロコフィエフは,原始的で野性的な側面とモダンですっきりとした新古典的な側面とを持った作曲家です。作風はその間を揺れ動いています。この曲は当然,後者に属しています。「ハイドンが生きていたら書いていたような作品」を作曲者自身目指していたようですが,非常にシンプルですっきりとした構成の作品となっています。オーケストラの編成もハイドン時代のものと同じです。一種のパロディ音楽で,曲中のいたるところに粋なユーモア感覚が散りばめられています。

この曲は「現代人が住んでいる古い町」という言葉で例えられることもあります。全曲を通じて,意表を突くような転調の面白さや不思議な感覚が溢れ,まさにこの言葉どおりのような曲となっています。現代的というよりは未来的な雰囲気さえ感じさせる,非常にモダンな感じの曲です。

第1楽章 アレグロのソナタ形式です。いきなり元気良く分散和音のような第1主題が登場します。この主題は定石を破りすぐにハ長調に転調します。この辺りが新鮮です。フルートによって推移の主題が演奏された後,跳躍の大きい第2主題が弦楽器の軽妙なスタッカートで登場します。ファゴットの伴奏もユーモラスです。一区切り付いた後,展開部になります。両主題が拡大されたり,リズムがずらされたり,と軽妙に展開されます。再現部は,ハ長調で出てきた後,ニ長調になります。この辺も古典の定石とはかなり違います。

第2楽章 ラルゲットの緩やかな楽章です。形式的には3部形式です。最初にヴァイオリンの高音で出てくる主題は,澄み切った透明感に溢れています。その後,フルートによって主題が出てくるのはハイドンによくあるパターンです。中間部ではファゴットと低弦のスタッカートで静かな主題が演奏されます。

第3楽章 ガヴォットの楽章です。古典派のの第3楽章は,スケルツォやメヌエットになることが多いのですが,さらに古風で実際の舞踏的なガヴォットとしている点がプロコフィエフらしいところです。古典時代の組曲に含まれているガヴォットでは第2ガヴォットという別のガヴォットも登場するのですが,ここでは出てきません。現代的な雰囲気と可愛らしさを併せ持った魅力的なガヴォットです。短い中間部で別の主題が出てきた後,ガボットの主題が弱音で再度登場します。楽章はスッと力を抜くかのように終わります。なお,この楽章の主題は,バレエ「ロメオとジュリエット」の中でも使われています。

第4楽章 非常に急速で活気のある楽章です。短いながらもソナタ形式を取っています。主題はいずれも軽快で,絶えず細かいリズムの動きが伴っています。フルートをはじめとして管楽器も印象的なメロディを所々で演奏します(この箇所はある解説書によるとフルートにとってはものすごい難所だそうです。通常は主旋律を演奏する高音楽器のフルートが「ドソミソ」と伴奏をする辺りが不思議な味を出しています)。最後は,華やかな気分が盛り上がり,明るくすっきりと終わります。(2002/9/1)