プロコフィエフ Prokofiev

■ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調,op.63
プロコフィエフは2つのヴァイオリン協奏曲を作曲しています。1番の方はシゲティが盛んに演奏したのに対し,2番の方はハイフェッツが演奏して,世の中に広まりました。この曲は,長い間亡命生活の後,プロコフィエフが祖国に永住する決意を固めた頃に作られています。ソヴィエトの,いわゆる「社会主義リアリズム」路線が全盛の時代でした。このことが曲の構想に大きな影響を与えています。

曲の構成は,「急(ソナタ形式)−緩(3部形式)−急(ロンド形式)」と常套的な構成を取っており,20世紀の作品としては非常に分りやすい作品となっています。全体に無機的な叙情性と華やかな雰囲気が簡素な形式の中に共存し,演奏効果の上がる曲となっています。演奏するヴァイオリニストも多く,ヴァイオリン協奏曲のレパートリーとして完全に定着しています。

第1楽章
冒頭,独奏ヴァイオリンが無伴奏で哀愁を帯びた第1主題を提示します。弱音器をつけた弦楽器などで引き継がれ,華やかに展開します。続いて,長調と短調,下降と上昇が結合された第2主題が独奏ヴァイオリンに出てきます。この2つの主題はそれほど大きなコントラストはありません。独奏ヴァイオリンが華麗な変奏を行なった後,フェルマータとなり,呈示部が終わります。

展開部でもこれらの主題はそれほど対比されることはなく,再現部に入ります。各主題が呈示部とは別の楽器で再現された後,コーダになります。ここでは,チェロとコントラバスが冒頭のメロディを表情豊かに演奏します。独奏ヴァイオリンの和音などに次いで,弦楽器のピツィカートで楽章が結ばれます。

第2楽章
透明な響きを持った多彩な旋律が次々と出てくる3部形式の楽章です。弦楽器のピツィカートの上にクラリネットのスタッカートが3連符の短調な音型を反復します。その上にヴァイオリンがロマンティックなメロディを出します。12/8拍子と4/4拍子とが交錯するセレナード風のメロディです。これが他の楽器で引き継がれ,ポリフォニックに展開されます。中間部では,アレグレットになり,少し華やかな雰囲気になります。再現部の後,独奏ヴァイオリンが3連符の音型を淡々と演奏して終わります。

不安定で無機的な感じがするけれども,それでいてとても美しい雰囲気を持った味わいのある楽章です。

第3楽章
5拍子,7拍子といった民族的で躍動的なリズムに特徴のあるロンド形式の楽章です。カスタネット,大太鼓といった鳴り物も活躍します。

独奏ヴァイオリンは,舞曲風のリズムの上に,まず3和音の豊かな響きを持つロンド主題(A)を力強く提示します。その後,独奏ヴァイオリンが哀愁のある第1エピソード(B)を演奏します。7/4拍子に変り,ソロが華々しく活躍した後,ロンド主題(A)が再登場します。ここではカスタネットが軽妙なアクセントを添えます。続く,第2エピソード(C)は,トライアングルとクラリネットの導入の後,G線上に逞しく登場します。その後は,(A)−(B)−(A)と再現され,コーダにつながります。この4/5拍子のコーダには,粗野な躍動感が漂います。最後には弦楽器のピチカートが強調され,楽譜にある通り騒々しく終わります。(2003/03/26)