プッチーニ Puccini

■歌劇「マノン・レスコー」
Manon Lescaut

アヴェ・プレヴォの有名の小説によるプッチーニ初期を代表するオペラです。同じ話を原作としたマスネの「マノン」に対抗してプッチーニが作曲したもので,一途な情熱が溢れたような作品となっています。

18世紀後半のフランス(終幕はアメリカのニュー・オーリンズ)を舞台とした作品で,全4幕からなっています。幕と幕の間で十分な説明なしにストーリーが飛んでしまう不思議なシナリオで,オペラを見ただけではストーリーがわかりにくいのが大きな欠陥です。ただし,プッチーニらしい美しいメロディをふんだんに含んでおり,プッチーニの出世作と言われています。

ストーリーは次のとおりです。アミアン宿で近衛軍曹のレスコーとその妹マノン,老財務官ジェロンテの3人が馬車から降ります。マノンは修道院に行く身の上です。騎士デ・グリューはマノンに一目ぼれし,マノンを連れ出して逃げます。

第2幕になると(ここでいきなりストーリーが飛ぶのですが),マノンはジェロンテの愛人に納まっています。マノンはこの贅沢な生活に満たされていません。ここにデ・グリューが再度現れ,一緒に逃げようと誘いますが,ジェロンテにみつかり,マノンは逮捕されます。第3幕はルアーブル港が舞台で,マノンは売春婦としてアメリカに追放されます。マノンを忘れられない,デ・グリューは船の下働きとして乗船します。

第4幕では(ここでまたストーリーが飛んで),マノンとデ・グリューの二人は町を追放され,アメリカの荒野をさまよっています。最後,マノンは力尽き,デ・グリューに見取られながら亡くなります。

●この柔らかなレースの中で
第2幕のジェロントに囲われているマノンの家でマノンによって歌われます。豪奢な部屋で化粧をしながら,満たされない心境を歌います。歌の中では,無理に引き離された恋人デ・グリューとの幸福な生活が回想されます。恍惚とした甘さと哀愁を漂わせた,名アリアです。

●ひとり淋しく捨てられて
第4幕のアメリカの荒野の場でマノンによって歌われる悲痛なアリアです。すべての望みを絶たれた悲しさを「ひとり淋しく捨てられて」と嘆きます。(2004/09/08)