ラヴェル Ravel
■ピアノ協奏曲ト長調

ラヴェルは2曲のピアノ協奏曲を書いていますが,もう一つは「左手のための」曲ですので,通常のピアノ協奏曲はこの曲1曲ということになります。どちらも20分ほどの短目の曲なのですが,この曲の方は編成的にも小振りです。古典的なバランスのあるディヴェルティメント的な雰囲気の曲となっています。その他,当時流行のジャズ的な雰囲気,複調的な雰囲気,ラヴェルの故郷のバスク地方の民俗的雰囲気などを併せ持ち,独特の味のある協奏曲となっています。

なお,この曲はラヴェルの最晩年の作品です。この曲の作曲後,ラヴェルは脳に障害が出始めていますので,実質最後の作品と言えそうです。

第1楽章 
冒頭が非常に印象的です。まず,ムチの音がビシっと入った後,ピッコロがバスク地方の村祭りといった感じの楽しげなメロディを吹き始めます。この間独奏ピアノは分散和音で伴奏をしています。このメロディはトランペットで繰り返されます(この冒頭のムチの音ですが,私はサーカスとかに出てくるような長い紐のようなムチで演奏しているのかとずっと思っていました。が...そんなわけはなく,実際は,拍子木のような形をした楽器で演奏されます。このことを知らなかったのは,それこそ無知(ムチ)です(これは池辺晋一郎さんの駄洒落です))。続いて,テンポが遅くなりちょっとジャズ風かなという感じのブルーな感じのメロディがピアノに出てきます。管楽器がこのメロディを引き継ぎます。

展開部ではせわしないピアノの動きが中心です。再現部の方は,かなり変えられています。ここでは,ハープのかなり長いカデンツァ風の演奏とその後に続くホルンの非常に高い音が聞き物です。続いて独奏ピアノのカデンツァが入ります。最後はピアノを含む全合奏で下降していく音型が演奏されて結ばれます。

第2楽章
古典的な雰囲気のある緩徐楽章です。最初,ピアノの独奏のみで優しい歌が連綿と歌われます。かなり長く独奏が続いた後,オーケストラが加わってきます。途中でちょっと違った主題が出てきて,調性が不安定になりますが,イングリッシュ・ホルンで最初の主題が出てくると再び安定した感じになります。この楽章の最後の方は,完全にイングリッシュ・ホルンの方が主役になります。

第3楽章
小太鼓のロールの上に,トランペットがきびきびとした感じの主題を演奏して始まります。この開始は,サーカスか何かが始まるような感じです。それを受けて速い音の動きのピアノが続きます。甲高い音の小クラリネット,とぼけた音のトロンボーン,ピッコロなどが叫び声を上げるかのように続きます。続いてピアノで出てくるのが,どうしても「ゴジラ,ゴジラ,ゴジラとメカゴジラ」と聞こえてしまうテーマです。この「ゴジラ」のテーマはその後も何度か登場します。いろいろなテーマが,ピアノの名人技を取り混ぜながらめまぐるしく交替して登場し,最後はこの楽章の冒頭と全く同じようなサーカス風の感じで結ばれます。(2002/6/24)