ラヴェル Ravel

■ツィガーヌ:音楽会用狂詩曲

サラサーテのツィゴイネル・ワイゼンと並ぶヴァイオリンの技巧が存分に積め込まれた名曲です。曲名もツィゴイネル・ワイゼン同様,「ジプシー」という意味です(こちらはフランス語ですが)。遅い部分(ラッサン)と速い部分(フリスカ)から成るチャールダッシュの形式なのもツィゴイネル・ワイゼンと共通しています。というわけで,ツィゴイネル・ワイゼンと同系統の作品です。

曲の最初の4分ぐらいはヴァイオリンのソロだけで演奏されます。最初の方は低音が中心でG線(ヴァイオリンのいちばん低い弦)だけで演奏されます。途中からは重音,フラジオレットなどヴァイオリンの技巧が駆使されます。ハープのグリッサンドが入ってきてヴァイオリン・ソロのカデンツァは終わりますが,この部分はヴァイオリニストにとってはとても怖い部分です。4分間も無伴奏が続くと大体は音程が悪くなるものです。ここでハープとピタリと音程が合えばそれだけで名手と言えます。

管弦楽が加わる後半は,ますます変化に富んだ雰囲気になります。ちょっと東洋風の雰囲気のある印象的な主題がまず出て来ます。この主題がいろいろな技法を駆使されて変奏されます。最後はさらに華麗な雰囲気になり,ぐっと盛り上がって終わります。

この曲は本来,「ピアノ・リュテラル」というツィンバロン(ハンガリーの民族楽器)に似せたピアノで伴奏するように書かれていますが,通常はラヴェル自身が管弦楽伴奏に編曲したものやピアノ伴奏で演奏されます。(2002/8/3)