ロッシーニ Rossini

■歌劇「セヴィリアの理髪師」

ロッシーニの代表作は何といってもこのオペラです。のみならず,すべての喜劇的なオペラ(オペラ・ブッファといいます)の中でも定番中の定番ともいえるほどの傑作となっています。

登場人物は,モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」と共通しているのですが,これは,どちらもボーマルシェ原作の3部作の中の一つだからです。ストーリー的には「セヴィリアの理髪師」→「フィガロの結婚」という順になります(ちなみに3作目は「罪ある母」曲という意味ありげなタイトルですが...オペラとして上演されることはないようです。誰も作曲していないのかもしれません)。「セヴィリアの理髪師」では,フィガロの機転で,ご主人様のアルマヴィーヴァ伯爵とロジーナとが結婚するまでを描いています。

序曲 
ロッシーニの序曲の中では,「ウィリアム・テル」序曲と並んで有名な曲です。単独で演奏されることも非常に多い曲です。が,実はこの曲はこのオペラのために書かれたものではなく,別のオペラの序曲から転用されたものです。言ってみれば「使いまわし=手抜き」なのですが,このオペラの雰囲気にあまりにもピッタリの曲想なので,そんなことなどは,どうでもよくなってしまいます。

曲は親しみやすいメロディに溢れ,非常に魅力のある曲になっています。序奏部は「パ・パーン」というちょっと威厳のある雰囲気で始まりますが,ちょっととぼけた感じの合いの手が入った後,いかにもイタリアオペラ的な美しいメロディが続きます。第1主題は短調になり,切迫した感じになりますが,管楽器による第2主題が登場してくると,ぐっと気分がリラックスしてきます。その後,ロッシーニ特有の息の長いクレッシェンドが登場し,さらに気分が盛り上がってきます。再度,第1,2主題が出てきた後,もう一度クレッシェンドが登場し,華やかに結ばれます。

●中傷はそよ風のようなもの
第1幕に音楽教師バジリオ(バリトン)によって歌われる曲です。医師バルトロに向かって「ロジーナを狙う伯爵を追っ払うには陰口を広げるのがいちばん」と歌います。最初は弱音でおどろおどろしく始まりますが,途中からロッシーニお得意のクレッシェンドとなり,最後はうわさが広がる様を口角泡を飛ばして捲くし立てます。ユーモアの感覚の溢れた大人気のアリアです。

(2002/05/04)