ロッシーニ Rossini

■歌劇「ブルスキーノ氏」序曲 Il Signor Bruschino

1813年にヴェネツィアで初演された1幕のオペラ・ブッファのための序曲です。人物の取り違えから起こる喜劇ということですが,全曲が演奏される機会はほとんどありません。序曲の方も,オペラの規模に応じて,こじんまりしたものです。こちらの方は,小回りの聞いた軽快さとユーモアのセンスが散りばめられた楽しい小品ですので,時々演奏されることがあります。曲のパターンは,「いつものパターン」ですが,一ひねりあります。

序奏は,少し暗い表情を持った弦楽器のによるフォルテで始まります。所々,タイミングを見計らうかのように「カチカチカチ」という音が入りますが,これは,弦の弓で譜面台を叩くという奇抜な奏法によるものです。

その後,第1ヴァイオリンが歌うような軽快な第1主題を提示し,管楽器が彩りを添えます。ここでまた「カチカチカチ」という例の音が入った後,1小節の休止をはさんで弦楽器の刻みが始まり,その上にフルートとクラリネットによるのどかな第2主題が提示されます。一旦音量を落とした後,ロッシーニお得意のクレッシェンドとなります。第1ヴァイオリンの下降音型が出てきた後,さらにクレッシェンドし,「カチカチカチ」の音が入ってきて,前半が終わります。

その後は,第1主題,第2主題が再現されます。爽快なコーダで結ばれますが,終わる直前にしつこく「カチカチカチ」の音が出てくる辺りが大変ユーモラスです。

この曲のいちばんの特徴は,「弦の弓で譜面台をたたく」というパフォーマンスです。生演奏で聞いてた方が(見た方が)楽しめる作品なのではないでしょうか。

(参考)ロッシーニの序曲のパターン
1.ゆっくりしたテンポの序奏(木管のソロがある)
2.クレッシェンドして主部に入る
3.主部はアレグロではヴァイオリンで第1主題が提示。
4.第2主題は管楽器で提示
5.クレッシェンドしてクライマックス
6.3〜4の再現
7.再びクレッシェンドして華やかに終わる。
(2005/09/04)