ラター Rutter

■レクイエム Requiem

イギリスの作曲家ジョン・ラターが1985年に作曲した、静かで美しいレクイエムです。ドラマティックな大作というよりは,フォーレやデリュフレの書いた小規模で個人的なレクイエムの系列を受け継ぐ,「癒し系レクイエム」です。その雰囲気が示すとおり,親しい人との死別が作曲の直接の動機だったということです。

曲の中には「怒りの日」のような激しい曲を含んでいません。編成的にもレクイエムに付き物のトロンボーンが入らない代わりに,グロッケンシュピールやハープなどが入り,独特の透明感のある響きを持っています。

1985年に作られた「現代音楽」なのですが,耳に馴染みやすいメロディを沢山持ち,ミュージカルを聞くような親しみやすさもあります。合唱関係者の間では,人気の高い曲となっているようです。

第1曲 Requiem Aeternam
ハープ,パーカッション,低弦の刻むリズムの上に始まります。この雰囲気は全曲を通じての基調となっています。最初は混沌としていますが,しばらくすると「レクイエーム」と優しい歌が出てきます。この声で一気に癒しの世界に引き込まれます。

第2曲 Out Of The Deep
チェロ独奏で始まります。その半音的な音の動きが,どこか黒人霊歌を思わせるところがあります。この「レクイエム」は,通常のラテン語の歌詞に加え,英語の歌詞が入るのが特徴です。この曲についてはそのことによって,さらに黒人霊歌的に響くところがあります。

第3曲 Pie Jesu
CMに使えそうなくらい,パッと耳に馴染む印象的なソプラノ独唱で始まります。天国的な雰囲気のある曲です。

第4曲 Sanctus
クリスマスを思わせるような気持ちの良いクリスタルなサウンドで始まります。後半の「ホザンナ」の部分は,大きく盛り上がり,曲全体のクライマックスを作ります。

第5曲 Agnus Dei

第6曲 The Lord Is My Shepherd
羊飼いをイメージさせるオーボエ・ソロで始まります。ここでもポップスを思わせる親しみやすさがあります。

第7曲 Lux Aeterna
前半,再度,ソプラノ独唱が登場した後,最後の部分では最初のレクイエムが再現して,全曲が閉じられます。(2004/09/13)