さだまさし Sada

■精霊流し

1974年4月にグレープの2枚目のシングル・レコードとして発売された作品。「さだまさし=グレープ」の知名度を一気に高めた初期の代表作です。前奏や間奏にさだ自身によるヴァイオリン・ソロが入るのが大変印象的で,グレープ=ヴァイオリン+ギターというキャラクターを定着させた曲といえます。

曲は一度聞いたら忘れられないような悲しくメランコリックなメロディで始まります。「精霊流し(キリスト教では”せいれい”ですが,ここでは”しょうろう”と発音します)」というのは,全国に様々ありますが,ここで歌われているのは長崎の「精霊流し」です。初盆を迎えた家で精霊船を作り,亡くなった人を送るお盆の行事です。そういうつもりで聞くと,一貫して続く伴奏のギターのアルペジオの動きは揺れる船と心の動きを表しているように思えます。

途中「約束どおりに」の部分で長調に転調し,その美しさに「ハッ」とさせられます。最初の悲しいメロディの部分ではなく,むしろ長調に転調するこの部分で悲しい感情が盛り上がるという見事な構成になっています。最後にまた短調に戻り,ヴァイオリンの後奏が入った後,静かに終わります。

曲は二番からなっています。この曲にはいろいろなアレンジがあるようですが,オリジナルのものには,爆竹の音とか花火の音などの効果音が入っていました。また,近年,さだまさし自身が同名で自伝的な小説も書いて,ベストセラーになっています。いろいろな点でさだまさしの原点となった名曲です。(2004/07/10)