サン=サーンス Saint-Saens

■ピアノ協奏曲第2番ト短調op.22

この曲は,サン=サーンスの作曲した5曲のピアノ協奏曲中もっとも流麗でまとまりの良い作品と言われています。サン=サーンス自身,若いときから名ピアニストとして有名でしたが,その初期〜中期を代表するのがこの作品です。

サン=サーンスは,モーツァルトと並ぶ神童作曲家でしたが,この曲の編成もモーツァルトのピアノ協奏曲と同じような2管編成です。演奏時間も20分余りということで,非常に親しみやすいピアノ協奏曲です。幻想的な気分と名人芸が,古典的な枠組みの中に盛り込まれているのも,サン=サーンスらしいところです。

[楽器編成] 独奏ピアノ,フルート2,オーボエ2,クラリネット2,ファゴット2,ホルン2,トランペット2,ティンパニー,シンバル,弦5部

第1楽章 アンダンテ・ソステヌート ト短調,4/4,序奏+ソナタ
冒頭,独奏ピアノが幻想曲のような感じで自由に演奏します。かなり大げさでもったいぶったような雰囲気は,2004年冬にTBS系で放送していたドラマ「砂の器」の中で使われていたピアノ協奏曲「宿命」のような感じもあります。その後,オーケストラによってト短調の和音が2度鳴らされ,序奏部が終わります。この和音はモーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲の最初の和音と似た雰囲気があります。

主部はソナタ形式で書かれています。第1主題はピアノによって表情豊かに弾かれます。特徴のある短い動機を扱った経過部の後,変ロ長調の第2主題がピアノで優雅に示されます。その後,小結尾となります。

中間部は展開部というよりは,ピアノの技巧を誇示するための部分となっています。ピアノは一時も休むことがなく,分散和音を華やかに演奏し続けます。その頂点に達した後,ピアノがさらに華麗に分散和音を弾き続ける中,力強く第1主題が再現されます。その後,ピアノのカデンツァとなります。このカデンツァでも第1主題の素材が扱われます。第2主題の再現は省略され,小結尾になった後,冒頭の導入部が再現されます。幻想的な気分が続いた後,ダイナミックな和音が再度出て,力強く第1楽章は締めくくられます。

第2楽章 アレグロ・スケルツァンド 変ホ長調,6/8,ソナタ形式
ティンパニの「タッタ,タタタ...」という軽快なリズムに続いて,ピアノがスケルツォ風の楽しい第1主題を軽快に弾き始めます。このリズムは,この楽章の基本となっています。テンポが少し遅くなり,「タッタ,タタタ...」と楽しげなリズムがピアノに出てきた後,人懐っこく,おどけたような第2主題がオーケストラに出てきます。これをピアノが繰り返します。

展開部では第1主題,第2主題の順に展開された後,型通りの再現部になります。最後は第1主題によるコーダで終わります。最後の方では,楽章の最初とうまく呼応するようにティンパニの弱音が活躍します。

第3楽章 プレスト ト短調,2/2,ソナタ形式
ものすごい剣幕で走りこんでくるような急速なピアノ独奏による4小節の序奏で楽章は始まります。続く第1主題もその勢いに乗ったままです。飛び跳ねるような音型の連続で,とても印象的なものです。第2主題の方は,ピアノのトリルが印象的です。

展開部では第1主題,第2主題の順に華麗に展開されます。強烈な下降音型の後,序奏部の力強いピアノ独奏が出てきて,再現部になります。型どおり再現された後,コーダとなり,力強い和音の連続で全曲が締められます。これだけ,ピアノが一気呵成に弾きまくる曲もなかなかありません。ピアノの名人芸を味わうためには絶好の楽章です。(2005/09/14)