サン=サーンス Saint-Saens

■チェロ協奏曲第1番イ短調
サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番は全曲で20分ほどのこじんまりとした作品ですが,ロマン派を代表するチェロ協奏曲の代表作としてよく演奏されます。演奏時間的にはシューマンのチェロ協奏曲と同等ですが,短調の曲の割にシューマンほどの晦渋さはなく,流麗なムードを持っているのがサン=サーンスらしいところです。チェロの名作「白鳥」の作曲者の面目躍如といった曲です。

全曲は,急・緩・急の3つの部分からなっていますが,続けて演奏されますので,冗長さがなくコンパクトにしっかりとまとまっています。楽器編成の方もトロンボーンを使わない2管編成で書かれていますので,古典的なエレガントさも感じさせてくれます。

第1部は性急に下降する印象的な第1主題が華やかに演奏されて始まります。この主題は,全曲を統一するテーマで,後で変形されて繰り返されます。第2主題は対照的に優美なものとなっています。展開部では第1主題を中心に扱われます。

第2部はゆったりと優雅な気分を持っています。軽快な舞曲風のオーケストラの伴奏の上で少しせつなげな歌をチェロが歌います。途中,チェロによる短いカデンツァも出てきます。

第3部は音楽な熱を帯びるように進行します。この楽章全体は,第1部の再現のような形になっていますが,主題は少し変形されており,チェロの技巧もより華やかになっており,見せ場が続きます。最後,第1部の主題が再現して,全曲がまとめられた後,爽快なクライマックスを築いて,曲は閉じられます。(2006/04/14)