シェーンベルク Schonberg

■浄夜,op.4

シェーンベルクは,12音技法という,20世紀の音楽に大きな影響を与えた作曲技法を考えた人として有名ですが(皮肉な見方をすれば「現代音楽=難解」という「常識」を生みだした張本人ともいえます。),この作品は,その技法を用いる前に作曲されたものです。つまり,シェーンベルクの初期の作品,後期ロマン派的な作品ということになります(作曲されたのも1899年なのでまさに世紀末です)。もともとは,弦楽六重奏のために作られたものですが,弦楽合奏版で演奏されることもよくあります。弦楽合奏版では,コントラバスが加えられ,独奏がところどころに出てくるのですが基本的な違いはないようです。

原タイトルは,"Verklarte Nacht"というもので,固定した邦訳はありません。「浄(清)められた夜」と呼ばれることもあります。タイトルは,デーメルという人の書いた同名の詩に基づいています。その詩の内容を音楽で表現したものです。大意は次のとおりです。
寒い月夜に2人の男女が林の中を歩いている。女は男に「私は妊娠しているが,それはあなたの子ではない」と告白する。女は罪の意識を感じるが,男は,「世界が明るく光っている。あなたは,浄められたその子を私たちのものとして生むでしょう」と答え,風の中で口づけをかわし,再度歩みをすすめる。
曲は切れ目なく演奏されます。まず,2人の歩みを表す静かな部分で始まります。耽美的な旋律が続きだんだん高潮してきます。中間部は,男の話し声や森のざわめきを表すような部分が出てきます。最後の方でもう一度盛り上がった後,歩みのモチーフが再度で出てきて,森のざわめきを表すような弱音で曲を閉じます。

...とはいえ,具体的にどの部分が何を表しているかなどは,はっきりわかりません。参考までに,私の家にあるカラヤン指揮ベルリン・フィルのCDのトラック分けの区分を書いておきます。
1)Grave (最初〜99小節)
2)Molto rallentando (100〜200小節)
3)Pesante(201〜228小節)
4)Adagio (229〜269小節)
5)Adagio(370〜最後)
(2001/11/06)