シューベルト Schubert

■イタリア風序曲
シューベルトは演奏会用の序曲をいくつか書いています。この中で「イタリア風序曲」とiいうタイトルの付けられた曲が2曲あります。このタイトルはシューベルト自身がつけたものではありませんが,曲の様式はまさにイタリア風となっています。当時のウィーンではロッシーニが大ブームでしたが,シューベルトもその影響を受けてこの曲を作曲したようです。

「イタリア風」の特徴としては,3連符,付点リズム,3度及び6度の平行,明るく親しみやすい主題,単純な和声法といったことが挙げられます。このことは,この曲にもあてはまリます。

第1番ニ長調,D.590
序曲+主部+ストレッタという3つの部分から成っています。序曲はゆったりしたアダージョです。全オーケストラのユニゾンで始まった後,ロ短調の主題が出てきます。この主題は,劇音楽「ロザムンデ」の序曲の中でも使われています。イタリアオペラを思わせるような大変美しい旋律です。

主部はアレグロになります。展開部のないソナタ形式で書かれています。爽やかな第1主題が快適に進みます。第2主題も第1主題から導き出されたもので,変奏されたような形で進んで行きます。ストレッタはアレグロ・ヴィヴァーチェということでさらにスピードアップします。クレッシェンドとフォルテシモで力強く全曲が結ばれます。この部分でも「ロザムンデ」序曲と同じ素材が使われていますので,この序曲全体の印象も「ロザムンデ」と大変よく似たものになっています。が,実は作曲されたのは,こちらの曲の方が先ですので,「ロザムンデ」の方が,真似をしたことになりそうです。(2003/07/19)