シューベルト Schubert

■アヴェ・マリア(エレンの歌III)D.839,op.52-6
Ave Maria(Ellens Gesang 3)

クラシック音楽の中には「アヴェ・マリア」という聖母マリアを讃える曲は沢山ありますが,その中で最も有名な作品の一つがこの曲です。ただし,この曲は単独の曲ではなく,イギリスの詩人,ウォルター・スコットの叙事詩「湖上の美人」をシュトルクがドイツ語に訳した7つの詩にシューベルトが曲を付けたものの中の6番目に当たります。エレンという乙女が,湖畔の岩上で聖母像に向かって父の罪の許しを祈る歌です。このエレンの登場する詩には3作あり,この「アヴェ・マリア」は,「エレンの歌III」というのが正式名称です。

竪琴の音を模したピアノ伴奏に乗って,3節からなる敬虔な祈りの歌がじっくりと歌われる永遠の名曲です。その息の長い音の動きは,聞く人すべての心を落ち着かせます。究極のヒーリング・ミュージックと言って良い音楽です。

この曲はシューベルト自身も好んでいましたが,そのメロディの美しさはどの時代の人にも好まれ,歌曲としてだけではなく,いろいろな楽器用にも編曲されています。その中では,ウィルヘルミ編曲によるヴァイオリン独奏版が特に知られています。その他,ディズニー映画「ファンタジア」の中でも印象的に使われています。(2007/04/13)