シューベルト Schubert

■ます Die Forelle, D.550(op.32)

変ニ長調,2/4,やや活発に,変化した有節形式

[作曲時期]1817年(1820年の第4版が一般的)
[歌詞] シューバルト(シューバルトというのは,シューベルトの書き間違いではなく,別の人物です(原綴はSchubart)。このシューバルト自身も作曲を行っていたらしいので,かなりややこしいですね。)

おそらく,シューベルトの曲の中でも,もっとも良く知られたメロディを持つ曲です。言うまでもなく,ピアノ五重奏曲「ます」の第4楽章の主題に使われたため,さらにいっそう親しまれるようになりました。

有節歌曲ですが,第1節,第2節が同じメロディで,第3節の前半だけが変化しています。この曲にはいくつかの版がありますが,現在一般に歌われているものは,6小節の軽快な前奏のある第4版です。

詩は,「楽しげに泳いでいるますを,漁師が水を濁らせてから釣り上げるのを見て,怒りを覚えた」といった内容です。前述のピアノによる前奏から,小川の清流にますがはねるように泳ぐ様子がうまく描写されています。この楽しげなムードがこの曲が親しまれているいちばんの理由ですが,途中,ますが釣り上げられてしまう部分での緊張感の高まりと怒りに震える息づかいも聞き所です。

曲を通じて,情景描写の巧みさが光っている作品です。そのこともあり,小中学校での音楽鑑賞の定番曲となっています。
(2007/09/29)