シューベルト Schubert

■野ばら Heidenroslein op.3-3,D.257
ト長調,2/4,愛らしく,3節の有節形式

[作曲時期]1815年
[歌詞] ゲーテ
シューベルト18歳の時の作品で,誰もがほとんど民謡のように親しんでいる愛すべき歌曲です。同じゲーテの詩に曲をつけたウェルナーの曲も親しまれていますので,「シューベルトの野ばら」「ウェルナーの野ばら」として区別して呼ばれることもありますが,やはり,シューベルトの曲の知名度の方が少し高いようです。

詩の内容は,「少年が荒野でバラを見つけ折ろうとすると,バラはとげを刺して抵抗しますが,結局は折られてしまう」といったものです。この歌詞には,恋人を傷つけてしまった男の自責の念が秘めているのではないかと言われています。

ただし,シューベルト曲には,そういう教訓めいたところはほとんど無く,生き生きとしたリズムにのって,素朴で親しみやすいメロディが愛らしく歌われます。ただし,単純な民謡と言い切れる曲でもありません,各節最後のリフレインでテンポを落とす辺りなど,悔恨の情のようなものも現れています。その他,細かな工夫も随所にあり,大人の歌にも子供の歌にもなり得る幅を持った曲となっています。(2007/09/29)