シューベルト Schubert

■付随音楽「ロザムンデ」D.797

シューベルトは非常に多作な作曲家で,各分野に傑作を残していますが,どういうわけか協奏曲と歌劇については後世まで残るような作品は作っていません。この「ロザムンデ」も,現在では上演されることがほとんどない劇ですが,その劇のために書かれた音楽だけは現在でもよく演奏されています。特に有名なのは,序曲,間奏曲第3番,バレエ音楽第2番の3曲です。いずれもシューベルトの歌の魅力に溢れた名曲で,間奏曲第3番などはオーケストラのアンコール・ピースの定番となっています。

序曲
ロッシーニの序曲などにも時々あるように,「ロザムンデ」の序曲も「魔法の竪琴」という別の劇音楽のために作られたものの転用です。「魔法の竪琴」の中に出てくるメロディをつないだ曲なのですが,今となっては,「魔法の竪琴」も「ロザムンデ」も上演されることはありませんので,純粋に曲の美しさを味わえば良いでしょう。

曲は,荘重な和音で始まります。続いて,オーボエとクラリネットで出てくる旋律はいかにもシューベルトらしい,甘美なものです。この旋律は弦楽器に引き継がれます。しばらくテンポの遅い序奏部が続いた後,一区切りが付いてアレグロの主部に入ります。まず,弦楽器を中心に軽快で沸き立つような第1主題が出てきます。第2主題はクラリネットで美しくひそやかに歌われます。もう一つの主題は,弦の弾むような動きの上に,フルートとオーボエがリズミカルに出てきます。この辺のリズム感は,シューベルトの曲によく出て来るパターンです。曲の後半は,この主部が再現され,最後にコーダが付いています。(2002/06/25)