シューベルト Schubert

■交響曲第2番変ロ長調,D.125
シューベルトが十代後半に作曲した爽やかな交響曲です。モーツァルト,ハイドン,ベートーヴェン,ロッシーニといった,いろいろな作曲家の曲を思い出させるようなところが随所にありますので,シューベルトらしいオリジナリティはまだ出ていないといえますが,曲全体に溢れる,初々しさは大家の作品にはない大きな魅力です。第1楽章,第4楽章などに漂うユーモアの感覚も魅力です。

第1楽章
「序奏−ソナタ形式」という楽章です。序奏は,モーツァルトの交響曲第39番の第1楽章の出だしと大変良く似ています。意識していないはずはないと思います。管楽器のファンファーレ風の動機に弦楽器の下降音型が応える形で進んで行きます。モーツァルトの曲の方が彫りが深い感じはしますが,この曲の親しみやすい表情とちょっとした陰も魅力的です。

序奏が終わると,軽やかに疾走するような生き生きとした第1主題が出てきます。この主題の方は,ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲とよく似ています。ロッシーニの曲のような雰囲気もあります。第2主題は,もう少し幅広く歌われます。この曲の変わっている点は,2つの主題が提示された後もかなり長く呈示部が続く点です。再度第1主題がが出てきた後,展開部に移って行きます。展開部では,第1主題の細かい音の動きと新しい動機とが対比されます。再現部も第1主題が中心に展開していきます。最後は音階風の進行で元気の良い勢いを持ったまま結ばれます。

第2楽章
穏やかなアンダンテの主題を変奏していく楽章です。最初に出てくる主題は,ベートーヴェンのハ長調のロンドを思わせるメロディです。主題には管楽器は出てこないのですが,それ以降の変奏で管楽器が出てくるというパターンは,ハイドンの交響曲などを思い出させます。第4変奏では短調になりますが,全体に大変おだやかな気分に包まれています。

第3楽章
メヌエット楽章です。通常,メヌエットといえば,明るい雰囲気があるのですが,この楽章は短調となっています。シューベルトは,他の曲でも時々こういう使い方をしています。力強く重いリズムを持ったメヌエット主題に対し,中間部の主題はオーボエの可憐なメロディで始まります。後半では他の木管楽器も加わってきます。再度,最初の短調の部分に戻り,楽章を閉じます。

第4楽章
プレスト(楽譜によってはアレグロ・ヴィヴァーチェ)の楽章です。タンタカ,タンタカ...というリズムが軽やかに続く心地よい第1主題で始まります。一息ついた後,ヴァイオリンにちょっと落ち着いた気分のある第2主題が出てきます。その後,第1主題が再度出てきて,展開部に入ります。

展開部でもタンタカ,タンタカというリズムが執拗なくらい続きます。ちなみに再現部になる直前に出てくるメロディは,守屋浩という人が歌っていた「僕は泣いちっち」の一節とそっくりです(イメージが壊れる?)。再現部では,第2主題が短調で再現されるのがちょっと変わっている点です。比較的さっぱりとしていますが,なかなか堂々としたコーダで全曲が結ばれます。(2003/07/18)