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シューベルト Schubert
交響曲第3番二長調D.200

シューベルトの交響曲第3番は,第2番の完成後ほどない1815年に短期間に一気に書き上げられたものと考えられています。この1815年という年は,シューベルトにとって実りの多い年で,2曲の交響曲以外にもたくさんの作品が生み出されています。この交響曲も,ハイドンやモーツァルトからの影響から抜け出しつつある歌曲作曲家としてのシューベルトの面目躍如たる明るい朗らかな歌に満ちた軽快な作品となっています。

当時,シューベルトは,父親の勤める小学校の助教員を嫌々務めていましたが,その一方,テレーゼ・グロープという女性に熱烈な愛情を感じていました。曲想にもそのことが反映していると考えられています。各楽章は,音階風の進行で関連づけられています。

当初は,仲間内の弦楽四重奏が発展したようなアマチュア・オーケストラのために書かれたものと考えられています。その初演ははっきりしませんが,完全な公開初演は,シューベルトの死後の1881年2月19日に行われたものと考えられています。

編成:フルート2,オーボエ2,クラリネット2,ファゴット2,ホルン2,トランペット2,ティンパニ,弦5部。

第1楽章 アダージョ・マエストーソ−アレグロ・コン・ブリオ,4/4
第1楽章は,アダージョ・マエストーソの序奏で始まります。ハイドンの後期の交響曲の序奏のように,一瞬,暗い雰囲気も漂わせますが,二長調で書かれていることもあり全般に輝かしさを感じさせるものです。この序奏で出てくる,音階風の動機は,続く主要部でも使われます。

続くアレグロ・コン・ブリオの部分は,ソナタ形式で書かれています。まず,付点リズムが特徴的な前へ前へ進もうとする第1主題がニ長調でクラリネットによって演奏されます。これが大きく盛り上がって行きますが,ここから第2主題へと推移する経過部で序奏の材料が顔を見せます。第2主題はオーボエによってイ長調で出されます。こちらの方も付点リズムを持つ軽快なものです。

展開部は,長いものではなく,両主題に共通する「ターララララ,ターララララ...」という付点リズムの動機を扱っていきます。やがてクラリネットが第1主題のメロディを演奏して,再現部になります。再現部が公式的に進んだ後,序奏部の材料が使われたコーダとなって,楽章は締められます。

第2楽章 アレグレット,ト長調,2/4,3部形式
簡潔で素朴な抒情性を持ったとても親しみやすい楽章です。トランペットやティンパニを使っておらず,リズムがくっきりしているので舞曲風の性格が強くなっています。最初に弦楽器で出てくる主題は,のちにリストがオラトリオ「聖エリザベートの物語」の中心的な主題として使った14世紀のドイツ民謡「マリアの子守歌」と酷似したものです。中間部はクラリネットが,さらにのどかで牧歌的なメロディを演奏します。こちらの方は,シューベルトの習作時代の歌曲「この世に愛せるものはない」のメロディと似たものとなっています。

シューベルトは,最初,べートーヴェン風のアダージョ楽章を構想していましたが,それをやめ,結局はこのような軽快さのある音楽としました。ただし,現在の形になってからも,はじめはこの楽章のテンポは,アンダンテ・モルトとされていました。また,中間部は,現行はハ長調ですが,当初は別の主題でホ短調で作曲されたいたとのことです。

第3楽章 メヌエット,ヴィヴァーチェ,ニ長調,3/4,3部形式
ベーートーヴェンの交響曲の場合同様,メヌエットとは書かれていますが実質はスケルツォ的な性格を持った楽章となっています。主題は,最初のアウフタクト(上拍)を強調したもので,独特の力強さを持った楽章となっています。力強いリズムが連続する辺りは,ベートーヴェンの交響曲と似た気分を持っています。中間の二長調のトリオは,レントラー舞曲風となっています。オーボエとファゴットの演奏するのどかなメロディを弦が簡単な伴奏で支えるものです。主部と対照的にセレナード的で室内楽的な気分を感じさせてくれます。

第4楽章 プレスト・ヴィヴァーチェ,ニ長調,6/8,ソナタ形式
タランテラのリズムを持つ軽快なイタリア風の第1主題で始まります。非常にノリの良い音楽です。この雰囲気や楽器使用法,クレッシェンドの用法などは,当時ウィーンで大人気だったロッシー二の音楽の影響を受けたものと考えられます。シューベルトは,一時,サリエリにも師事したこともありますが,この辺の影響も考えられます。第2主題の方も第1主題の素材でできていますので,結局,呈示部は,タランテラの浮かれたリズムが延々と続く,常動曲的性格を持ったものになっています。

展開部は,どちらかというと第2主題の動機を中心に扱っていますが,結局はタランテラのリズムに支配されています。その後,再現部,コーダと一気呵成に続き,明るく結ばれます。このように全体の構成は明快なのですが,時々,大胆な転調が見られ短調に傾く部分があります。この辺がシューベルトらしいところです。(2007/07/15)