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シューマン Schumann
序曲,スケルツォとフィナーレ,op.52

シューマンは,同じジャンルの作品を集中的に作曲する作曲家でした。この「序曲,スケルツオとフィナーレ」という作品も,「交響曲の年」と呼ばれることのある,1841年に作曲されています。そのとおり,3楽章からなる小交響曲といった味わいを持った作品で,シューマン自身,「シンフォニエッタ」と呼ぼうとしたこともありましたが,緩徐楽章がないということで,最終的には,かなりな奇妙な現在のタイトルに落ち着いています。

妻のクララとの幸福な家庭生活の中で書かれた曲ということもあり,同じ年に書かれた交響曲第1番「春」同様,喜ばしい気分を持っていますが,執拗に同じリズムが繰り返されたり,対位法的に声部が絡み合ったりする辺り,「いかにもシューマン」らしい気分も漂っています。

この曲は,1841年に作曲されましたが,初演の評判がかんばしくなかったため,1845年に大幅な改訂が行われました。こちらの方は,大変評判が良く,翌1846年に出版されています。現在,一般的に演奏されているのも,この改訂版の方です。

序曲 
暗い色調を帯びたアンダンテ・マ・コン・モート,ホ短調,4/4の序奏で始まります。冒頭の動機が転調されながら進んでいきますが,強い緊張感をもたらすことはなく,アレグロ,ホ長調,2/2の主部に入っていきます。

主部は,ソナタ形式で書かれています。ヴァイオリンによって活気と翳りが同居したような魅力的な気分を持った第1主題が演奏された後,経過部を経て,序奏部の動機に基づく第2主題が対位法を伴ってイ長調で演奏されます。

フェルマータの付いた全休止が入った後,簡潔な展開部になります。木管楽器によって第1主題が演奏されて,再現部になります。楽章の最後は,ウン・ポーコ・ピウ・アニマートになり,少しテンポを速めます。最後に木管楽器が第2主題を示した後,ホ長調で締められます。

スケルツォ
ヴィーヴォ,ホ長調,6/8,3部形式。いかにもシューマンらしい,前へ前へ進むようなリズムが執拗に繰り返されるスケルツォ楽章です。この部分では,ヴァイオリンを中心に浮き立つような動きを作ります。

変ニ長調,2/4のトリオも同じテンポですが,対照的に滑らかな旋律に支配されます。この部分が終わった後,最初のスケルツォ部分が戻ってきます。経過部の後,トリオが回想され,コーダになります。ここでは,まず序曲の第1主題が再現され,スケルツォ主題が断片的に出てきた後,軽やかに締めくくられます。

フィナーレ
アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ,ホ長調,2/2,ソナタ形式。和音的な導入部に続いて,付点及び複付点リズムを持つ第1主題がヴァイオリンによって演奏されます。第2主題も,第1主題と関連したもので,同様にヴァイオリンで演奏されます。こちらはメンデルスゾーンを思わせるような気分を持っています。小結尾では,木管楽器による上昇していくようなフレーズが特徴的です。この呈示部は繰り返されます。

展開部は,第1主題の動機を織り込みながら,キッパリとかつ執拗にリズムを刻みながら進んでいきます。次第に高潮し,小結尾の動機が盛り込まれた後,再現部に入っていきます。コーダでは,第1主題を拡大した形のにコラール風のメロディが出てきて,堂々とした雰囲気の中で全曲が締めくくられます。(2010/10/05)