シューマン Schumann

■交響曲第3番変ホ長調,op.97「ライン」

シューマンとライン川といえば,「晩年にライン川に身投げをした」という変な連想をしてしまうのですが(この時は漁師に救助されています),この曲からは,そういう不健康な印象を受けることはありません。この「ライン」というタイトルはシューマン自身がつけたものではありませんが,曲の随所にライン地方の気分があふれているので,ぴったりのネーミングです。作曲当時シューマンは,ドレスデンからライン川沿いのデュッセルドルフに移っています。この頃すでにシューマンは,病気がちだったのですが,この転地が,このように明るく開放的な雰囲気の曲を生む動機になったようです。曲は5楽章構成になっている点が少し変わっています。

第1楽章
「ライン」の第1楽章は,ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」と同じ調性で書かれているせいか,どことなく似たところがあります(番号も同じ3番です)。この楽章は,序奏なしでいきなり厚みのあるスケール感のある雰囲気で始まり,国際河川ライン川の雄大さをイメージさせてくれます。3/4拍子なのですが,あまり3拍子っぽっくないところも「英雄」と似ています。第2主題は,オーボエとクラリネットで短調で表れます。この2つが交互に出てくるうちに,提示部は終わり,展開部になります。展開部はかなり長く,短調の第2主題が中心に出てきます。ホルンに最初の雄大な旋律が出てくると,再現部になります。コーダでは,金管楽器の強奏を交えて明るい雰囲気で結ばれます。

第2楽章
スケルツォということですが,実際は,流れるような感じのロンドになっています。主題はレントラー舞曲風の素朴さがあります。途中,細かい音の動きが入った後,ホルンなどによって短調の主題が出てきます。ライン川の沿岸ののどかな風景を彷彿とさせるような魅力的な楽章です。

第3楽章
木管楽器で優しい感じの主題が演奏されて始まりますが,この楽章は全曲中の間奏曲のような位置づけです。続いて出てくる半音で上にのぼっていくような音型は楽章を通じて何回も登場します。優しさと愛情にあふれる楽章となっています。

第4楽章
シューマンの住んでいたデュッセルドルフの上流にはケルンという都市がありますが,そこにある大聖堂のゴシック風の壮麗さを思い出させる楽章です(と書きつつ行ったことはないのですが...。実際,シューマンは,大聖堂での印象を元に作曲したとのことです)。まず,ホルンとトロンボーン(ここで初登場)によってゆっくりとした壮麗なテーマが出てきます。多声部にテーマが出てくるので,聖堂中に響き渡るような宗教的な雰囲気があります。中間部でも気分は同じなのですが,カノン風になります。楽章の最後の方は,金管のファンファーレなども加わり,オルガン風の荘重な響きとなります。

第5楽章
前楽章から一転して,非常に活気のある行進曲風の楽章となります。明快な低音部の動きに乗って,秋の収穫祭を思わせる主題が登場します。金管などのファンファーレが時々入り,祝祭的な気分を盛り上げます。第2主題はそれほど目立つ感じではありません。展開部は弱音から始まり,徐々に盛り上がる形になっています。途中,ホルンに上昇していく音型のメロディが表れ,気分も高潮し,再現部になります。ファンファーレが出てきた後,曲は,まさに「追い込み」といった感じでテンポアップし,コーダになります。金管楽器の強奏を交えて,非常に生き生きとしたダイナミックな感じで全曲が結ばれます。(2002/06/25)