シベリウス Sibelius
■交響曲第2番ニ長調op.43

フィンランドを代表する作曲家シベリウスが,国民主義的な態度を取っていた時代の代表作です。当時のフィンランドはロシアの圧制下にありましたが,この曲は「フィンランディア」同様,フィンランド国民の愛国的な心情を刺激して,初演は大成功をおさめました。この曲は1901年という20世紀の始まりの年に書かれましたが,交響曲の歴史に残る名作として現在でも頻繁に演奏されています。

曲は北欧の自然を思わせるような民謡風の親しみやすさとスケールの大きさが共存しています。民謡のメロディをそのまま使っているわけではないのに,牧歌的な雰囲気を持っています。このことは,この曲が南国イタリアで作曲されたことと関係があるのかもしれません。

そのため,この曲は「シベリウスの田園交響曲」などと呼ばれたりすることもありますが,モティーフをしつこく展開し,暗から明に変わって行く構成は,ベートーヴェン〜ブラームスと続く交響曲の伝統を感じさせる重厚さも持っています。少ない素材をうまく使って作られているため,全体としてすっきりと簡潔にまとまっていながら,壮大で自由な雰囲気を持っているのがこの曲の素晴らしいところです。

いろいろな断片的なモチーフの繰り返しが多く,全休止が所々で出てきますので,ブルックナーの交響曲を思わせるようなところがあります。

第1楽章
さりげなくさざめくような音型が弦楽合奏で演奏されて曲は始まります。この音型はこの楽章全体の雰囲気を作る重要なモチーフで,繰り返し出てきます。続いて,クラリネットとオーボエによって弾むような民謡風の明るい第1主題が出てきます。ホルンがのびやかにこのモチーフに応えます。続いて,弦楽器がひんやりとした感触のメロディを演奏したり,いろいろなメロディの断片が出て来たりして,幻想曲風に進んでいきます。

弦楽器のピツィカートを交えて徐々に盛り上がっていった後,その頂点で木管楽器群による第2主題が出てきます。その背後で,弦楽器が序奏の動機を演奏しています。ここでも断片的な動機がキラリと光るような感じで数回明滅します。

冒頭のさざめくような動機が再現して静まると,曲は展開部に入ります。木管楽器を中心に第2主題や断片的な動機が扱われ,曲は息長く高揚していきます。最後は金管楽器を中心にクライマックスを築きます。

その後,全休止が入り,ホルンの先導の後,木管楽器が第1主題を演奏し,再現部になります。第2主題はトランペットに出てきます。楽章の最後は,冒頭の動機が遠ざかって行くように静かになり,穏やかな和音で終わります。

第2楽章
光と闇が交互に出て来て,次第にスケールアップしていくような構成の楽章です。アンダンテとアンダンテ・ソステヌートの主題とが交錯し,独特の気分を醸し出します。ティンパニの不気味な弱音の連打に続いて,低弦のピツィカートに乗ってファゴットが憂いをたたえた第1主題を呈示します。その後ホルンが締めくくりのモチーフを演奏します。曲は次第に高揚し,金管楽器を交えてクライマックスを作ります。

その後,突如静かな気分に変わり,弦楽器による優美で甘い第2主題が出てきます。雲の間から光が差してくるような印象的な部分です。幻想的な雰囲気が次第にオーケストラいっぱいに広がって行きます。

その後,第1主題が再現します。ここでは,トランペットとフルートが応答します。この部分が盛り上がりを見せた後,第2主題が出てきます。今度はヴィオラとクラリネットに寂しい感じで演奏されます。金管楽器の荒々しいモチーフが出てきた後,幻想的な気分になります。楽章の最後の方では,「ドンファンの哄笑」と言われている木管楽器によるトリルが出てきて,不気味なユーモアを感じさせます。金管楽器が峻厳な響きで参加した後,ピツィカートで楽章が結ばれます。

第3楽章
荒々しいリズムによるスケルツォ楽章です。イタリアで作曲されたことを考えるとタランテラ風とも言えます。何かにとりつかれたように慌しく進んでいきます。総休止の後,トリオになります。オーボエによるしみじみとした牧歌を他の管楽器が歌い継いでいきます。

再度,慌しいスケルツォが戻って来た後,トリオが再現しますが,今度はそれが弦楽器に引き継がれ,第4楽章の主題を暗示しながらじわじわと盛り上がって行き,休みなく次の楽章に続きます。感動的な気分の盛り上がる部分です。

第4楽章
その感動の頂点で,第4楽章が始まります。長い冬の後の春を思わせるような雰囲気があります。ベートーヴェンの交響曲第5番の第3楽章〜第4楽章への移行を思い出させるところもあります。

弦楽器群による輝かしい第1主題を中心に展開していきます。低弦のオスティナートが続く中,トランペットが勇壮に応答します。たっぷりとしたメロディがメロディがしばらく続いた後,フルートに爽やかなメロディが出てきます。弦楽器がそれを引き継いだ後,うねるような弦楽器の音型を従えて,北国の冬空を思い出されるような暗い悲歌風の第2主題が木管楽器に出てきます。これがうねうねと続いた後,金管楽器にファンファーレが出てきます。その後は静かで落ち着いた雰囲気になります。

展開部では,これまでに出てきた主題の断片が色々な楽器で形を変えて執拗に繰り返されます。次第に大きく盛り上がり,その頂点で第1主題が輝かしくたっぷりと感動的に再現します。第2主題の再現は呈示部よりも長く,スケール感を増しています。金管のファンファーレが出てきてクライマックスを築いた後,一旦落ち着いた感じになりますが,ここから再度じわりじわりと盛り上がっていきます。低弦とティンパニのオスティナートの繰り返しの上に金管のファンファーレが,感動的に出てきます。まさに「大団円」という感じで雄大に全曲を締めくくられます。(2004/01/17)