OEKfan TOP > 曲目解説集  Program Notes
シベリウス Sibelius
交響詩「タピオラ」op.112 Tapiola
1926年,シベリウス自らの生誕60周年記念行事用に依頼されて作曲した作品です。

シベリウスは,フィンランドの大叙事詩「カレワラ」に基づく作品を何曲も書いていますが,この曲もそういう作品の一つです。タピオラというのは,この叙事詩に出てくる出てくるタピオという森の神の住む領土のことです。つまり,フィンランドの象徴である森を表現した曲ということが言えます。

シベリウスは,交響曲第4番以降,非常に精緻で簡素なオーケストラ作品を書くようになりましたが,この「タピオラ」もその系列に属します。特に交響曲第7番との類似性が高く,交響曲第8番と言ってもも良いような密度の高さを持っています。

シベリウスは1957年まで生きていた作曲家なのですが,60歳を過ぎてからは全くと言って良いほど曲を書いていません。この曲は,シベリウスの最後の重要な作品と言える傑作です。

曲はティンパニのドロドロという音に続いて「森の主題」と呼ばれる弦楽器による印象的なモチーフで始まります。この響きを聞いただけでシベリウスだと分かる独特のひんやりとした空気に包まれます。その後,この森の主題の動機が何回も繰り返され,曲はさらに深い気分になって行きます。そのうちにチェロとファゴットに森を支える大地を思わせるようなゆったりとした音の繰り返しが出てきます。

ヴァイオリンに長2度の音程を持った音型が出てた後,その上にフルートを中心とした木管楽器群に「タピオの主題」と呼ばれる神秘的な音の動きを持った主題が出てきます。一陣の風を思わせるフルートとピッコロの音の後,今度は,森の中の妖精を表す副主題がヴィオラとクラリネットに出てきます。「森の主題」の変形のような半音階的な音の動きがしばらく続いた後,ずっと続いていた長2度の音程が止み,これまで出てきた動機がいくつか出てきて,最初の部分が終わります。

続いて,軽妙で飛び跳ねるような音の動きを持ったスケルツォ風の部分になります。この音の動きもこれまでに出てきた主題と関連しています。「タピオの主題」を中心とした展開が続いた後,フルートとピッコロの高音域に神秘的なメロディが出てきます。続いて4つに分けられたチェロ・パートにしんみりとした主題が出てきます。これが他の楽器に受け継がれた後,突然,ティンパニを伴う金管楽器がこの主題をファンファーレのように荒々しく演奏します。これがすぐに静まった後,この動機がさらに展開されます。

打楽器と金管楽器による強奏が続いた後,フルートとピッコロが出てきて,軽妙なリズムを持った部分になります。これが発展した後,金管楽器の演奏する和音のリズムを受けて「タピオの主題」が演奏されます。金管楽器の咆哮の後,森が静かにざわめくような部分になります。このざわめきが大きく盛り上がりそのクライマックスに金管楽器のファンファーレが出てきます。それが静まった後,弦楽合奏の清冽な響きが残り,平和な和音で静かに全曲が閉じられます。

(参考文献)
作曲家別名曲解説ライブラリー;18.北欧の巨匠.音楽之友社,1994
(2007/01/27)