シュトラウス,J.II  Strauss,J.II

■ワルツ,ポルカ以外の作品

エジプト行進曲,op.335
この曲の作曲された1869年はスエズ運河が開通した年です。それにちなんで作曲された曲です。この辺は「新しいもの好き」のヨハン・シュトラウスらしいところです。ちなみにヴェルディの「アイーダ」も同じ時期に作られています。

曲はエキゾティックなクラリネットのメロディでひっそりと始まります。何となく砂漠を進むキャラバンのようなイメージが沸いて来ます。だんだんクレッシェンドしていき,フル・オーケストラでこのメロディが演奏されます。その後,転調し明るい雰囲気になります。中間部では,通常合唱が入ります。合唱といっても...オーケストラの「口の空いた」人たちが「ラーラララ,ラーラララ」と歌うものです。この辺のパフォーマンスが,生の演奏会での大きな聞き所となります。最後は最初のエキゾティックなメロディが戻って来ます。このメロディが徐々にデクレッシェンドしていき,冒頭と逆に消えるように終わります。ケテルビーの「ペルシャの市場にて」と似た発想・雰囲気の曲といえます。

無窮動,op.257
この曲は「常動曲」と呼ばれることもありますが,ある世代より上の人には1970年代にTBS系で放送されていた「オーケストラがやって来た」という番組のテーマ曲としてのイメージが強いと思います。曲のタイトルは「いつまでも続く永久運動」というような意味です。つまり,曲の最後まで行ったところで最初に戻るように指示がされており,その気になればどれだけでも続けられる曲となっています(サティの「ヴェクサシオン」という曲は「840回繰り返すこと」という指示の出ている「ほとんど嫌がらせ」のような曲ですが,この曲については2回繰り返すのは聞いた事がありません)。

作曲された当時の産業革命ブームを反映しているといえますが,シュトラウスの方は,サブタイトルとして「音楽によるいたずら」と書いているとおり,一種の冗談音楽です。「オーケストラがやってきた」でこの曲をテーマとして使っていた理由はわかりませんが,オーケストラの各楽器がソロで順番に出てくること(司会の今は亡き山本直純さんはよく立たせて演奏させていました)に加え,曲全体にあふれる「ジョークの精神」が番組の雰囲気とマッチしていたからだと思います。ちなみに,テーマ曲版では,曲の最後の方に出てくるホルンの重奏のところで,会場のお客さんに「オーケストーラがやーってきたー,オーケストーラがやーってきたー」と歌わせる手順になっていました。この音のはまり具合の見事さには驚くべきものがあります。

この曲には,曲の性格上「終わりがない」ため,指揮者が棒を止める時に「何かひとこと」言うのが慣例になっています(言わない人もありますが)。私が聞いたことがあるのでは次のようなものがあります。クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィル"And so on", ボスコフスキー指揮ウィーン・フィル"And we still could do it again"(私のヒアリングなので怪しいです),確かカラヤン指揮ウィーン・フィルの唯一のニュー・イヤーコンサートでも演奏していたはずですがCDには収録されていません。いちばん印象的なのは,カール・ベーム指揮ウィーン・フィルが1975年(多分)に来日した時の”ひとこと”です。この時は「いつまでも」と日本語で言っていました。(200//)