シュトラウス,ヨーゼフ Strauss,Josef


■ポルカ
●ポルカ「憂いもなく」
お客さんにとってもそうですが,オーケストラの奏者にとってもストレスの発散に役立つ曲です。ヨハン・シュトラウスの曲の中にもオーケストラの奏者に歌わせる曲はありますが,この曲はポルカ・シュネル(テンポの速いポルカ)で,聞いているだけで元気になりますが,中間部ではさらにオーケストラの奏者に「ハッ,ハッ,ハッ,ハッ」と歌わせて(?)います。笑う門には副来るという,まことにお目出たい作品です。

●ポルカ「おしゃべりなかわいい口」
ヨハン・シュトラウスには,「トリッチ・トラッチ・ポルカ」という女性のおしゃべりを皮肉ったような楽しい曲がありますが,この曲の方は,もう少し穏やかなおしゃべりのようです。メロディの間に「ギギギ」というラトルの音が入るのが特徴です。サイモン・ラトルに是非とも振ってもらいたい曲です。最後に,オーボエが取り残されたようになるのもユーモラスです。

●ポルカ「鍛冶屋」,op.269

近頃,鍛冶屋という言葉を聞いたことのない子供が増えていきたようですが(という私も「おとぎばなし」の世界でしか知らないのですが),そのイメージをユーモラスに描いた作品です。序奏に続いて,いきなり「カーン」と鉄床(かなとこ)の音が出てきます。曲の途中では,2つの鉄床で,掛け合いを行い,さらに賑々しく曲が進んでいます。それでいて,おっとりとした上品さが漂うのは,ヨーゼフ・シュトラウスのセンスの良さによるところでしょう。

●ポルカ・マズルカ「とんぼ」
この曲は,「ポルカ・マズルカ」というタイトルどおり,とても優雅な雰囲気の漂うロマンティックな作品となっています。とんぼが空中で止まった後,「すーっ」と飛ぶ様子がうまく表現されています。ヨーゼフの曲はヨハンに比べると文学的だと言われることがありますが,この曲はその代表でしょう。この曲は,2002年のウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートで小澤征爾さんも取り上げています。

●ピチカート・ポルカ
この曲は兄のヨハン・シュトラウスとの共作です。弦楽器群によるピツィカートとグロッケンシュピールだけで書かれた粋で気の効いた作品です。聞く方も思わず顔がほころんでしまうような雰囲気がありますので,アンコールなどでもよく演奏される曲です。

大の大人が2人がかりでどうやって作曲したのかは謎です。兄のスケッチを弟がアレンジした説,主部が兄で中間部が弟という説などがあります。1869年にハバロフスクへの演奏旅行の合間の気晴らしに作曲されたもののようです。

その後,兄のヨハン・シュトラウスは「新ピツィカート・ポルカ」という同じ傾向の曲を作っていますが,演奏頻度はこちらの方が圧倒的に多いようです。(2002/11/30)