シュトラウス,R  Strauss,R.

■クラリネット,ファゴットのための二重小協奏曲ヘ長調,AV.147

リヒャルト・シュトラウスといえば,大編成の華やかなオーケストラ作品の作曲家というイメージからありますが,基本的にはモーツァルトなどの古典的な音楽を敬愛していました。若い頃から「その気」はあったのですが,80歳を過ぎるあたりから,古典への回帰をどんどん強めていきました。この二重小協奏曲(デュエット・コンチェルティーノとも呼ばれます)は,同時期に書かれたホルン協奏曲第2番,オーボエ協奏曲などと似た傾向を持つ,愛すべき作品となっています。この曲でソロを担当するのはクラリネットとファゴットですが,その他にも弦楽五重奏の5人もソリスト的な役割を担っていますので,バロック時代に流行った合奏協奏曲的な趣きもあります。

曲は続けて演奏される3つの楽章から成っています。この曲には純粋な器楽作品として作曲されたのですが,構想の時点では,「豚の番人」「王女と乞食」「王女と熊」といったタイトルをイメージしていたと伝えられています。いずれもアンデルセン童話に基づいています(「美女と野獣」という説もあります。)。クラリネットは王女,ファゴットは番人,といったアイデアがあったらしいのですが,最後には破棄されたようです。

第1楽章
弦楽合奏でこの曲全体を支配する軽やかなメロディが密やかに演奏されて曲が始まります。2つに分けた弦楽セクションがこのメロディをカノン風に演奏します。続いて独奏クラリネットが息の長い主題を演奏し始めます。その後,ファゴットが低音域から登場します。クラリネットがカデンツァ風のフレーズを演奏した後,ファゴットが半音階進行を持った不思議な感じの主題を演奏し始めます。

途切れがちなファゴットにクラリネットが加わり,展開していきます。オーケストラの中からヴィオラとチェロがソロで現れ,木管との間で四重奏的に進んでいきます。クライマックスを築いた後,弦楽オーケストラが堂々としたフレーズを演奏します。ハープが加わり,クラリネットが最初の息の長い主題を変形したものを演奏し,第2楽章に続いていきます。

全体として,この楽章では,クラリネットの活躍が目立ちます。

第2楽章
この楽章ではファゴットが中心になります。弦楽器の美しいトレモロの上にファゴットがモノローグを繰り広げます。続いてチェロとユニゾンを成し,クラリネットも加わってきます。静かな中にも情熱が加わってきます。一息ついた後,ファゴット,クラリネットの順に対話をするようなやりとりが出てきます。そのまま次の楽章に続いていきます。,

第3楽章
ここでは2つの楽器が対等に対話をしていきます。最初に出てくる音型は第1楽章冒頭の主題から出てきたもので,この楽章全体に登場します。何となく悪戯っぽく戯れるような雰囲気があるような楽章です。中間部の主題はクラリネットとファゴットがハープの分散和音の上にユニゾンで歌われます。クラリネットとファゴットは,楽章を通じて,対話をしたり,ユニゾンになったりと,いろいろな掛け合いを繰り広げていきます。最後には互いが歩み寄り,ユニゾンになって,オーケストラと共に力強くすっきりと曲を結びます。(2003/02/18)