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シュトラウス,R.. Strauss, R.
ホルン協奏曲第1番変ホ長調op.11

リヒャルト・シュトラウスは,ホルン協奏曲を2曲書いていますが,作曲家としての最初期と最晩年に分かれている点が面白い点です。第1番は,名ホルン奏者だった父フランツの60歳の誕生祝い(還暦祝いですね)のために書かれたものです。保守的な作風の曲ですが,名ホルン奏者のための曲ということで,ホルンの用法は完璧で,若々しい生気のみなぎった作品となっています。シュトラウスの作品では,ホルンが活躍する曲が数多くありますが,その原点とも言える作品です。

曲は,1883年に完成し,ミュンヘンで初演されています。ただし,どういうわけか,独奏は父親ではなく,その弟子のブルーノ・ホイヤーという奏者によって演奏されています。

ちなみにこの曲の正式のタイトルですが,「ヴァルトホルンのための協奏曲」といいます。つまり,ヴァルブの付いていないナチュラル・ホルンを意識した作品です。そのため,メロディの動きに制約があり,半音の動きをあまり使わず,和音を分散したような形の音の動きが中心となっています。ドイツの森にこだまする健康的な角笛のイメージがこの曲のいちばんの特徴と言えます。

曲は3楽章形式ですが,楽章の切れ目はありません。各楽章の動機にも関連性があるので,単一楽章的な統一感も持っています。

編成:独奏ホルン,フルート2,オーボエ2,クラリネット2,ファゴット2,ホルン2,トランペット2,ティンパニ,弦五部

第1楽章 アレグロ,変ロ長調,4/4,自由なロンド形式
オーケストラの和音に続き,ホルンがファンファーレ風の主要主題を演奏して,曲は始まります。このメロディをオーケストラが受け継いだ後,伸びやかな副主題がいくつか出てきます。メロディの雰囲気は,モーツァルトのホルン協奏曲のような古典的な感じですが,曲の構成はかなり自由なものです。

主題の間をつなぐ経過的な音型として「タッタ,タタタター」という力強い分散和音が何回か登場しますが,これが全曲に渡る統一感を作っています。その後,静かな雰囲気になり,切れ目なく次の楽章に移行します。

第2楽章 アンダンテ,変イ短調,3/8,3部形式
ホルンによって静かでのびやかな主題が演奏されますが,これは第1楽章の副主題から導かれたものです。伴奏の部分にも第1楽章に出てきた音型が使われており,統一感が作られています。中間部では,ホルンが大きく情熱的に歌い上げるのが聞きものです。その後,最初の部分が再現されて,第3楽章に続きます。

第3楽章 ロンド,アレグロ,変ホ長調,6/8
「タッタ,タタタター」の音型に基づく序奏に続いて,ホルンが軽妙な主要主題を演奏します。モーツァルトのホルン協奏曲などに出てきそうな雰囲気のものですが,それに続く副主題も共通する気分を持っています。これらが交替して出てきた後,最後にたっぷりとホルンが歌い上げ,クライマックスを築きます。最後は,さらにテンポが速くなり,胸のすくような軽快な音の動きの中で全曲が締めくくられます。
(2009/06/20)