チャイコフスキー Tchaikovsky

■イタリア奇想曲op.45

チャイコフスキーは,37歳の時に結婚しましたが,わずか2ヶ月で破局をむかえました。極度のノイローゼとなった彼は,海外で転地療養をし,元気を取り戻すことになります。これに味を占めたのか,その後,チャイコフスキーは海外旅行をする機会がぐっと増えます。

この曲は,タイトルどおりイタリア旅行中にスケッチしたメロディやリズムを使って作曲されています。メランコリックな作品の多い,チャイコフスキーの曲の中では珍しく,明るい気分にあふれた曲です。現代でも演奏会で演奏されたり,CD録音されたりする機会の非常に多い曲です。

この曲は,続けて演奏される4つの部分とコーダとからなっています。

第1部
コルネットとトランペットの晴れやかなファンファーレで曲は始まります。このメロディは,イタリア王室の騎兵隊のラッパからヒントを得たといわれています。その後,ちょっと沈んだ気分になり,「タタタタ,タタタタ」という三連符を2度繰り返す音型が出てきます。この音型は,この曲の他の部分にも再三出てきます。弦楽器にも荘重なメロディが出てきます。カノン風に展開し,冒頭のファンファーレなどが再現した後,オーボエに明るくのびやかなメロディが出てきます。これは「美しい娘さん」という曲です。その後,グロッケンシュピール,打楽器なども加わり,次第に盛り上がって行きます。

第2部
三連符のリズムが「タッタカタッタ,タッタカタッタ」という感じに変わると,第2部になります。弦楽器に軽快な調子の楽しげなメロディが出て来ます。これが管楽器で繰り返された後,さらに表情豊かで甘い雰囲気を持ったメロディが出てきます。これが一息つくと,また三連符のリズムが出て来て,第1部の暗いメロディが再現されます。

第3部
この部分はイ短調になります。弦楽器の伴奏の上に木管楽器群が軽快なタランテラのメロディを出します。メンデルスゾーンのイタリア交響曲などを彷彿とさせる部分です。その後,長調に変わり,新しい楽想が出てきます。オーボエにも印象的なメロディが出てきます。それでも活気のあるリズムは一貫しています。次第にタンブリン,シンバル,大太鼓などが加わり,全体的な重量感も増してきます。

第4部
第1部に出てきた「美しい娘さん」のメロディが弦楽器を中心にダイナミックにのびのびと演奏されて再現されます。爽快な気分のあふれる部分です。

第5部
ティンパニのコントラバスの持続音の上に第3部のタランテラ主題が出て来て,徐々に音量を増して行きます。調性をめまぐるしく変えながら,熱狂的に盛り上がって全曲が結ばれます。(2003/12/17)