チャイコフスキー Tchaikovsky

■憂鬱なセレナード変ロ短調,op.26

チャイコフスキーのヴァイオリン曲といえば,協奏曲が何と言っても有名ですが,その第2楽章にしても良いような雰囲気のある曲です。タイトルどおり,悲痛な感じもあるのですが,甘美さと情熱があるのが特徴です。タイトルには「セレナード」という言葉が入っていますが,モーツァルトの曲で使われているような音楽の形式としてのセレナードではなく,声楽曲のセレナードと同じような恋人(この場合は「つれない人」?)に寄せる歌といった感じの曲となっています。

この曲は,ヴァイオリン協奏曲同様,名ヴァイオリニストのアウアーに献呈されています。アウアーは,協奏曲について「こんなもの弾けるわけない」と言った人ですから,この曲を初演したのは,当然協奏曲より前ということになります。

曲は,静かな前奏の後,独奏ヴァイオリンのため息のように甘美で悲しみをこめた主題で始まります。この主題が連綿と歌われた後,中間部では少し希望を取り戻したかのように情熱的になり,次第に盛り上がっていきます。その後,最初の主題が戻ってきますが,伴奏の方はより複雑な動きになっています。クラリネットなど木管楽器との絡み具合はヴァイオリン協奏曲を思わせるところがあります。曲は消え入るように終わります。(2002/9/9)