チャイコフスキー Tchaikovsky

■スラヴ行進曲,op.31
1876年4月に起きたブルガリアの民族運動はバルカン諸国を巻き込んで次第にエスカレートし,最後はロシアとトルコとの戦争にまで発展しました。この戦争で負傷したセルビア将兵の慰問のための慈善演奏会で初演されたのがこの曲です。ロシアとセルビアを力強くたたえたこの曲の初演は大成功でした。

エキゾティックな魅力と力強さがコンパクトにまとまって,演奏効果も大変上がる曲ですので現在でも大変人気の高い曲です。演奏会で聞かれる機会やCD録音も非常に多い作品です(交響曲の録音の埋め草に最適?)。

低弦の短い序奏に続き,ファゴットとヴィオラに葬送行進曲風の重々しい中心主題が出てきます。この主題は,コントラバスとティンパニに伴奏されて演奏されます。その後,楽器を変えて4回ほど繰り返され次第に大きく盛り上がって行きます。その他にもスラブ風のメロディが次々と登場し,戦争の不安と激しい戦意を描きます。中間部では新しく民謡調子の主題も顔を出します。最後に低音楽器がロシア国歌を堂々と歌い上げて,スラブ民族の勝利を確信するかのように全曲を結びます。(2003/08/21)