ヴォーン=ウィリアムズ Vaughan Williams
■チューバ協奏曲ヘ短調

作曲者が晩年に作曲した,チューバ協奏曲の代表作です。この曲はロンドン交響楽団の創立50周年を記念して作曲されたもので,チューバという楽器の持つイメージとは反対に,短く簡潔な感じの協奏曲となっています。この楽器のために書かれた協奏曲は非常に少ないので,20世紀中盤に書かれた曲にも関わらずすでにこの分野の古典となっています。

第1楽章
元気の良いオーケストラの響きに続いて,チューバが細かい音の動きをもった主題を演奏します。かなり高い音域も使って,叙情的にメロディを聞かせます。途中チューバが演奏する5音階風のメロディはイギリス民謡風です。ちょっと日本民謡にも聞こえるところもあります。再度,最初の部分に戻ります。カデンツァが入った後,壮大な雰囲気になって楽章が結ばれます。

第2楽章
「ロマンス」と題された楽章です。チューバに限らず,ユーフォニアム,ファゴット,チェロなどでも独立した曲として演奏できるようになっています。非常に親しみやすい温かみのあるメロディが全編に渡り聞くことができる魅力的な楽章です。最後にチューバが一節演奏した後,楽章が結ばれます。

第3楽章
「ロンド・アラ・テデスカ(ドイツ風ロンド)」と題された活発な動きのある楽章です。最初からチューバの迫力のある豪快な音の動き出てきます。独奏楽器がチューバだけあって,誰にも止められないという感じの暴力的なスピード感が楽しめます。この楽章でもチューバによるカデンツァが最後に出てきます。その後,ズドンという感じで曲は終わります。(2004/04/04)