オーケストラ・アンサンブル金沢特別公演
98/7/18金沢市観光会館

1)ドビュッシー(ビュッセル編曲)/小組曲
2)ラヴェル/ツィガーヌ
3)サラサーテ/カルメン幻想曲op.25
4)ルーセル/蜘蛛の饗宴:交響的断片(組曲)
5)コダーイ/マロシュセーク舞曲
6)コダーイ/ガランタ舞曲
●演奏
渡辺玲子(Vn*2,3)/関谷弘志指揮OEns金沢

まず,驚いたのは私の席の隣(正確には空席をはさんで隣)に岩城宏之さんが座ったことです。今回のコンサートは特別演奏会で全席自由だったので2階最前列のいちばん眺めの良い席に座ることができたのですが,主催者招待席というのが私の隣にあいており,きっと協賛企業の招待客でも来るのかと思っていたら,開演直前に岩城さんがいらっしゃいました。何も言わないのも変なので「こんにちは」などと間の抜けたことを言ってしまいました(考えてみると「今晩は」でした)。「今日はお客様ですか?」と尋ねるとニコニコと「ここは初めてです。」とおっしゃていました。後から思えばあれこれ尋ねてみたいこともあったのですが,その時は緊張して思い付きませんでした。前半だけで退席されたのですが,プロの演奏家の隣でコンサートを聞くことなど二度とないことかもしれないので良い思い出になりました。

今回は演奏会は当初,フィリップ・ベンダーという指揮者のはずだったのですが,どういうわけか関谷弘志さんという若い指揮者に変更になりました。で,まず,期待して聞いたのはなんといっても渡辺玲子さん独奏のヴァイオリン曲2曲です。これは,期待どおりでした。ツィガーヌの最初のソロの音からして気合がこもっていて迫力満点でした。荒っぽい音もすべて計算して出している感じでよく弾きこまれていました。一年前,やはり同じ時期に竹澤恭子さんのバーバーのヴァイオリン協奏曲を尾高/OEKとの組み合わせで聞いたのですが,それとはまた別の意味で迫力がありました。来月は諏訪内さんを聞くことができるのですが,現在の日本のソロ・ヴァイオリンの名手を次々と聴くことができ幸運だと思っています。

演奏会の後,渡辺さんのサイン会があり私も新譜のベルクのCDにサインをしてもらいました。この名演奏のおかげでこのCDは結構売れていたようですが,家に帰って聴いてみて「カルメンと全然違う!」と怒っている人もきっといたと思います。

指揮の関谷さんという人は音楽之友社の「指揮者のすべて」とう指揮者名鑑にも名前の載っていない人でほとんど無名といってもよい人だと思いますが,とても良い指揮者だと思いました。指揮台に登ってオーケストラに一礼をする姿が初々しく見えましたが,出てくる音楽はとても落ち着いていました。全般にとても柔らかくのびのびとした音が出ており,オーケストラが大変良く鳴っていました。中ではやはりコダーイの舞曲2つが楽しめました(実は後から思うと2曲の区別がよくつかないのですが)。室内オーケストラだと確かに音の面での迫力は少ないのですが,リズムの切れはかえって良くなったと思います。コダーイの作品ではその辺が大変楽しめました。岩城さんはもしかしたらこの指揮者の様子を見るために来られたのかもしれませんが,きっと満足されていたと思います。

コンサートの話題はどうしても東京中心になってしまいますので,これからも機会があればOEKのコンサートを中心に金沢のコンサートのレポートをしてみたいと思います。ちなみに今度は,須川展也さんの新譜(OEKが伴奏)発売記念の演奏会に行こうと思っています。これもなかなか面白そうです。