エストレリータ:Summer night concert:CD発売記念公演
97/07/25根上町総合文化会館(タント)
1)メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」
2)メンデルスゾーン/交響曲第4番イ長調,op.90「イタリア」
3)アルベニス/セヴィリア
4)アルベニス/カディス
5)ピアソラ/オブリビオン(忘却)
6)ポンセ/エストレリータ
7)ハーライン/星に願いを
8)ララ/グラナダ
(アンコール曲)
9)ヒナステラ/粋な娘の踊リ
●演奏
須川展也(Asax,Ssax*3-9)/山下一史/OEns金沢

根上町というのはジャイアンツのゴジラ松井の出身地なのですが,そこに近年シューボックス型のとても良いホールができました。ここで須川展也さんとアンサンブル金沢の共演したCDのレコーディングが行われ,その発売記念のコンサートが行われました。同様のコンサートは金沢市でも行われたのですが,どうせならレコーディングの行われたその場所で,と思い車で1時間ほどかけて出かけてみました。

ホールは700席ほどで座席は傾斜がついていてどこからでもステージがよく見えました。音響は,レコーディングに使われただけあって,とても良いと思いました。レガートがとても奇麗に流れ,スタッカートには雰囲気がありました。これが,OEKの本来の響きなのかなと思いながら,前半のメンデルスゾーンはいつもよりグレードアップした響きを楽しみました。実際,若いイメージのあるOEKにはメンデルスゾーンの音楽はよく合います。山下一史さんの指揮も率直で気持ちが良いものでした。

後半はCDに収録された曲を中心に須川さんのトークを交え進みました。このコンサートの聴衆はあまりコンサートに慣れていない感じで,イタリア交響曲の1楽章の後に拍手が入ったりしましたが,後半は半分ポピュラー音楽のコンサートのようだったので緊張もほぐれ拍手の量も増えてきました。

須川さんはとても感じのよい爽やかな感じの方でした。アルト・サックスとソプラノ・サックスを使い分けていたのですが,実はアルト・サックスもかなり高音が出ることがわかりました。ただし,かなり苦しげな音になります。その辺がかえって「いい味」になるようです。

プログラムの中では最後の「グラナダ」(CDでは最初の曲)がいちばん楽しめました。演奏前にサックスのいろいろなテクニックを説明してくれたのですが,そういうのを駆使した演奏でした(循環呼吸とかスラップ・タンギングとか言ってました。)。序奏部にかなり長いカデンツアがあるのですがその辺であれこれやっていました。最後はラプソディ・イン・ブルーの冒頭部みたいな感じで終わります。

その他の曲はアレンジが甘すぎる気もしましたが,CDで聞くよりは,オーケストラの音とよくなじんで聞こえました。一般にサックスといえばジャズというイメージなのですが,やはり須川さんのサックスはクラシックなのだ,と再認識しました。CDの方はサックス中心のバランスになっているな,と後で聞いて思いました。

最近話題のピアソラの曲も1曲演奏されたのですが,演歌っぽい印象を持ちました(決して悪い意味ではありません。)。今年公開された映画「エビータ」のサントラ盤をもっているのですが,やはり,「夜のムード歌謡」みたいなゆっくりした曲が中に混じっており,アルゼンチン風というのは結構,演歌の世界に近い(恐らくは演歌の方がラテンの影響を受けているのでしょうけれども)と思いました。

朝川朋之さんという人がいくつかの曲のアレンジャーだったのですが,ハーピストとして参加していました。アレンジャー兼ハープというのも珍しいですね。

あと,トークの中では,「須川さんと山下さんは同じ歳」「須川さんは以前宮本文昭さんの出ていたタバコのCMに近々登場する」というようなことを言ってました。ラヴェルのボレロの中のソプラノ・サックスのソロの一節を「クラシックのサックスといえばこれです」と言ってさらりと吹いてくれたり,となかなかサービスも良かったです。

演奏会終了後は,例によってサイン会を行っておりサインをもらってきました。サックスをデザインした凝ったサインでした。ちなみにCDはEMIから出ています(TOCE-9521)。真っ赤の表紙のクラシックらしからぬデザインです。